Up money creation 作成: 2020-12-20
更新: 2020-12-20


    銀行は,「貸付」あるいは「利息」として,預金者xの預金残高aをa+nに書き直す。
    nは,どこからか持ってきたのではない。
    「何も無いところから創り出した」というものである。
    中央銀行であれ民間銀行であれ,銀行がこれをすることは,通貨量をn増やすことである。

      但し銀行が民間銀行の場合,xがnを出金するとき,n増えた分は解消される。
        実際,xが民間銀行Aからnを出金することは,つぎのようになることである ( 通貨の定義):
        1. 中央銀行の台帳で,Aの預金残高がn減り,xの預金残高がn増える。
        2. Aの台帳で,xの預金残高 a+n が aに戻る。
      増やしたnがそのまま残ることになるのは,民間銀行の口座の間で通貨が移動する場合である (これは,人が決済に民間銀行口座間の振替を専ら利用する場合にあたる)。

    銀行は,このやり方によって,いくらでも通貨量を増やすことができる
      これを "money creation" と謂う──れっきとした経済学用語である。
      和訳は「信用創造」になっていて,意味がぼかされた格好である。
    但し,言うまでもないが,銀行は後のことを考えて「いくらでも増やせる」に限度を措いていることになる。


    こうして,通貨の総量は,つぎの二つの和になる:
    • 中央銀行の預金総額
    • 民間銀行全体の貸付と利息の総額

    通貨の総量は,わからない。
    民間銀行全体の貸付と利息の総額が,わかるものでないからである。
    ──「民間銀行」は,個人が生業にしている小さな金貸し業を含めて「民間銀行」である。 中央銀行の貸付額はわかるが,民間銀行全体の貸付・利息総額はわからない。


    金融政策は,うまくいったためしがない。
    民間の通貨が量も挙動もさっぱり読めないことが,金融政策を成り立たないものにするのである。