Up 通貨原論 : はじめに 作成: 2020-11-04
更新: 2020-11-04


    新型コロナに「自粛」管制で対応した国は,前例のない大規模な財政出動を余儀なくされた。
    そして財政出動は,ここまでのもので収まったのではない。
    失業者数や倒産件数に代表されるところの経済被害の実態は,まだ隠れており見えていない。
    生活困窮に陥った者たちへの本格的手当,倒産させるわけにはいかない巨大企業に対する救済施策も,これからである。
    「GoTo‥‥」手法の対象者不特定タイプの手当支給なども,この先まだまだ続けていくしかない。

    ひとは,財政出動で国庫から支出される金は,税金で賄われていると思っている。
    よって,つぎの疑問をもつことはない:
      「この多額の金はどこから出てくるのだろうか?」
    実際は,新型コロナ対策の財政出動では,税金収入の何倍もの金が支出される。
    国の債務は既に1千兆円を超えているが,この調子だと2千兆円に到達するのにそんなに時間はかからない。

    そこで,本来なら,つぎの疑問が持たれるべきなのである:
      「国の財政とは,こんな調子でやっていくものなのだろうか?」
      「国の債務は,誰が債権者なのか?」

    ひとは,「税金」のことばに加え,「国債」のことばに騙されている。
    「国債」を引き受けた者がおり,それが債権者だと思うのである。

    実際はどうか。
    国債を引き受けた者は中央銀行──日本では「日銀」──である。
    国は,自分が自分の債務の債権者になっているのである。
    そして,このときやっていることは,金造りである。
    「百兆円規模の財政出動」の百兆円は,元手がゼロである。


    民間で金を造ったら,偽金造りの犯罪である。
    そこで,つぎの疑問が持たれるべきである:
      「通貨って何だ?」

    この疑問は,これまで余り持たれることはなかった。
    「金造りをやっている」は,凡人の頭には思いもよらないことだったのである。
    国会議員なんかはずいぶん頭がよいのだろうと思いたいが,以前政権をとったときの民主党はまさにこの凡人の手合いであった。
    「埋蔵金」捜しをやったのである。
    しかし,新型コロナの財政出動規模をあからさまに見せつけられると,よほどの鈍感でもなければ「金造り」を疑うことになる。


    「金造り」は,明かされてみれば,まったくその通りである。
    秘密でも何でもない。
    常識にしていくことである。
    問題は,つぎの点である:
      「金造り財政は,この先どうなるのか?」
      「金造り財政に,限度はあるのか?」

    このことは実験できるものではないので,これまで不明であった。
    しかし,新型コロナ財政出動は,まさにこれの実験になっている。
    そして「手当」財政出動が普通のことになった財政は,年中行事の自然災害にも一々財政出動していくようになる。

    この情況を,「通貨って何だ?」を考える環境が与えられたと捉えるべし。
    そして,「通貨って何だ?」の論考を開始すべし。