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「作品」と「商品」
教材開発は,技術的な課題を一つ一つクリアするという形でゴールに向かいます。したがって,教材開発の研究者のその時々の関心はどうしても近視眼的なものになります。
研究者は,技術的な課題のクリアを作品の形で公に問います。研究者集団内では一つ一つの成果を大事にしなければなりませんから,作品と将来の商品との乖離については紳士協定的に目をつぶることになります。よって,はた目には専ら技術的な話題で盛り上がっているという態になります。
したがって,作品と商品の乖離を強調しておくことは無駄ではありません。作品は,新たに達成されたことがら──特に,新しい機能──で評価されます(“研究の積み上げ")。一方商品は,エンターテインメント作品としての完成度,そして現実に流通させ得るということで評価されます。評価の次元が両者では全く異なるわけです。
《作者の露出度》も作品と商品の違いを見る観点になります。作品は作者の自己表現/自己主張です(“オリジナリティ")。わたしたちはそのようなものとして作品と対峙します。
商品の場合は,これとは逆になります。商品の使用においてその製作者の影がちらつくというのは,商品がよくできていないしるしです。実際,使用に粗が出てくるとき,素材(メディア)や製作者が意識されてきます。このようにならないために,空白をなくすかのように隅々まで作り込んでおかなければなりません。商品として完成させるとは,製作者も素材(メディア)も見えなくする/透明にするということなのです。
教材開発は,《作品の見せ合い》から《商品の見せ合い》の段階へと速やかに移行していくのでなければなりません。商品化のノウハウ──商品としての完成度を高めるノウハウ──が,わたしたちが今後確立していかねばならないところのものです。