Up 中教審:免許科目「教職実践演習」 作成: 2008-03-06
更新: 2008-03-06


    「中教審」という教育行政の装置は,ほんとうに困りものである。
    「教育は改革で!」を信条とする行政が,「改革のアイデアは?」調で中教審を招集・組織する。 招集されたメンバーはその空気を読んで「新しいものづくり」を自分の仕事達成の形にする。 ( 中教審はどうしてあんなふう?)
    教育は,その時その時の思いつきグッズをジャラジャラぶらさげられる。身重でお化けみたいになる。

    「教員の能力低下」「問題教員」の問題にも,こんな調子で臨む。
    宿題をやった形を「新しいものづくり」にしなければならないので,授業科目や研修の新設の提案を最終報告にする。
    直近のことでは,「教員免許更新講習」や「教員免許科目に教職実践演習を新設」がある。

    「教員免許更新講習」は,シミュレーションすれば簡単にわかるように,「優良ドライバに対する運転免許更新講習」のようになる (すなわち,形だけのものになる) しかない 。 ただ,お荷物と余計な出費が増える。 ( 免許状更新講習)
    「教職実践演習」も,以下これについて述べるが,余計なお荷物を増やすだけ。


    北海道教育大学札幌校は,国立大学の「法人化」への対応ということで,「反従来型」の課程再編を行った ( 事例:北海道教育大学札幌校)。 科目バラバラ主義の立場をとり,
    1. 教科縦割りを連想させるようなコース名を一切無くす。
        註 :「従来型」の意味は,教科教育を柱にした学生グループやカリキュラムの構成。
    2. そして,「教職実践演習」のような科目で特色を出そうとする。

    1 については:
      教科教育コースが,総合学習開発専攻 (定員50) と基礎学習開発専攻 (定員100) に解消される。
    そして,2 については:
      例えば基礎学習開発専攻では,「実践教育科目」「基礎実践フィールド科目」のカテゴリーが,「教職実践演習」的科目に相当する:

    1 年 2 年 3・4 年 単位数
    実践教育科目 ●教職論 2 ●道徳の指導法 2   20
    ●教育の基礎と理念 2 ●特別活動の指導法 2
    ●発達と学習 2 ●生徒指導・進路指導
     の理論と方法
    2
     教育の制度と社会 2 ●教育相談
     の理論と方法
    2
     学校経営と学級経営 2 ●総合演習 2
    ●教育課程と教育方法 2  
    教育
    実践
    フィー
    ルド
    科目
    教育
    実習
    基礎教育
    実習
    ●基礎教育実習(小学校) 1     6 14
    ●基礎教育実習(中学校) 1
    基本
    実習
    ●教育実習(小学校) I 5
    ●教育実習(中学校) I 5
    応用
    実習
     教育実習(小学校) II 2    
    0〜2
     教育実習(中学校) II 2
     教育実習(幼稚園) 2
    障害児教育
    実習
     障害児教育実習 3
    採用直前教育
    実習
     採用直前教育実習 1
    へき地教育
    実習
     へき地教育実習 I 2
     へき地教育実習 II 2
    教育
    フィールド研究
     教育フィールド研究 I 2     4〜6
     教育フィールド研究 II 2
     教育フィールド研究 III 2
     教育フィールド研究 IV 2
    教育実践論  野外教育論 2  へき地教育指導法 2   2〜4
     ボランティア論 2  総合学習実践論 2
     体験学習論 2  養護実践論(養) 2


    中教審が提案した「教職実践演習」はどのようなものになるか?──これを考えるために,上の科目カテゴリーの実際運用を見てみよう。

    上記科目のうち,
        教職論
        総合演習
        教育フィールド研究
    は,特に専門性がないものとして,各教科で行う。
    各教科では,だいたいが「担当を交代制にする」というふうにして,その年度の担当者を決める。
    これは,「ゆとり教育」で「総合学習」が学校現場に課されたときと同じようになる。 すなわち,「なにをしても自由」から始まり,「つまらないことをやる」になる。 (つまらないものにしない方法は,専門の授業にしてしまうことである。)


    指導的立場にいて,「自由科目・総合科目・実践科目」を発想し,そしてこれを現場に降ろしてくる者は,つぎのように思うタイプの者である:
      "If we build it, they will come."
      自分が枠を与えれば,与えられた者はその内容を上手に埋める。

    そして,こうはならない。


    「教職実践演習」的科目は,お荷物になる。
    そして,「教員の能力低下」「問題教員」の問題を解決する方法は「教職実践演習」的科目をつくることだと思うタイプの者が教育をリードしている限り,このお荷物科目は増える一方になる。