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オフサイト教育の困難
作成: 1997-02-26
修正: 1999-03-10
人材の整備
ハードウェア的な課題は着々と解決されていきます。
オフサイト教育(遠隔教育)の最大の問題は,コンテンツを自ら用意し発信できる人をとり揃えることです。
例えば,「通信制」の導入が一個の大学で困難なのは,まず人が揃わないからです。
WWWオフサイト授業の場合 - 高品質な学習材の完備
WWWオフサイト授業の場合,学習材はごまかしがききません。完成品として学習者に渡さねばなりません。
このため,授業者は,たいへんな時間と労力を学習材の作成に費やすことになります。その上,能力/センスが重要な問題になってきます。
TVオフサイト授業の場合 - 授業の演出
ディスプレイを通して受ける授業は,直の授業よりも,学習者にとって窮屈/単調なものになります。演出をよくよく考えないと,学習者の耐えられない授業になります。
したがって,授業者は,かなりの時間と労力を授業のプラニングおよび教材の作成に費やすことになります。
「授業しているつもり」は,「授業になっている」ことではありません。
単なる発信ではなくそれを真に「授業」にすることは,簡単ではありません。
授業運用の困難とコンテンツ整備の困難のトレードオフ
TVオフサイト授業の場合は,これまでの授業のやり方をある程度踏襲することができます。したがって,学校,企業,自治体等でオフサイト教育を立ちあげようとするときは,TVオフサイト授業になるのが普通です。
しかしこの場合には,つぎの問題をクリアしなければなりません:
施設の確保,施設の適正な分布
授業者,学習者,施設のスケジュール調整
オペレータの用意
このため現実には,TVオフサイト授業は,「決まった時間に授業を受けられない人のための授業」にはなりません。学校の授業,企業の職員研修のような形でのみ機能します。
「決まった時間に授業を受けられない人のための授業」,すなわち(「在宅学習」,「在任地学習」と称されるような)「マイペース学習」を実現するオフサイト授業は,WWWオフサイト授業ということになります。
インターネットは今日既に個人メディアです。そしてホームページの上では,多様な表現を実現することができます。
しかし,オフサイト教育をWWWオフサイト教育の形で組織しようという試みは顕著ではありません。
なぜでしょう?
それは,コンテンツをそろえることができないからです。コンテンツ・メーカーをそろえることができないからです。
テクスト・ベースでならコンテンツ・メーカーを組織することができるかもしれません。しかし,テクストのページで授業をすることはできません。それができるのは,学習の動機付けがきっちりできていて,学習を通じて何を自分が得ようとしているかをはっきり承知している人に限ります。一般教育の色合いが濃くなるほど,テクストのページは教材として通用しなくなります。端的に,学習者がこれを忌避します。
確認:
「コンテンツ・メーカー」とは,ホームページをつくれる人のことではありません (そのような人ならいくらでもいます)。ひとに教えるものをもっており(すなわちその内容について「専門家」であり),そしてそれをホームページの形に良質に表現できる人のことです。
強調
:
遠隔教育の企画でいちばん重要でたいへんなところは,コンテンツをとりそろえること,授業者をとりそろえることです。
ハード的なシステムの整備は,端緒にしか過ぎません。
ハードにひとが寄って来るわけではありません。企画者は,ハードをひとに近づけることをしなければなりません。
「遠隔教育」というとメディアや通信技術に目を奪われがちですが,もっとも肝心な要素はいつも人です。人に関する条件が整わなければ,どのようなメディア/技術も無力です。