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授業/プレゼンの仕方 (主な留意点)
作成: 2001-03-25
更新: 2002-05-20
(主に大学の非常勤講師を対象)
自分の授業は,なかなか客観的に見ることのできないものです。特に,慣れないうちは。そこで,授業を行うにあたっての主な留意点をここで挙げてみることにします。
授業を「講演」の感覚でやると,しくじります。
内容/構成/展開について
内容量の見積もり,内容構成,時間配分
導入
展開
収束,レビュー
態度/パフォーマンスについて
態度/演技
体の向き,アイ・コンタクト
話し方
ビジュアル・イメージの援用
プロジェクタを使用するプレゼンの場合
質疑応答
学生のざわつきを静める方法
重要!
話し足りない感じを満たそうとしないこと
授業を「講演」の感覚でやると,しくじります。
講演の聴衆は,親戚のようなものです。聴いてあげようという人たちが集まっています。
学生は「他者」です。おもしろくなかったら,引いてしまします。
「話せば聴く」とはなりません。「聴かれるように話す」ことが必要になります。
言い換えると,学生は,あなたの授業を正直に映す鏡です。
あなたの授業がうまくいっているときは,学生も集中します。
(実際,学生はあなたの授業に期待して臨んでいます。)
授業するとは,わがままな消費者に商品を買ってもらうようなものです。
戦略なしに授業するとしくじります。十分に戦略を練ってください。
内容量の見積もり,内容構成,時間配分
授業時間内にただしく収まるように,内容量を見積もること。
慣れないうちは,時間を余してしまう不安から,内容を多くし過ぎるきらいがあります。
授業内容をしっかり構造化し分節化することが,時間配分に誤りがないようにする方法です。
ちなみに,時間を余してしまった場合,アドリブの雑談や質疑応答でなんとかしようとするのは,たいていうまくいきません。時間つぶしに困っていることが学生に見えているので,全体が気まずい雰囲気になるからです。
こんなときは,予定通りの時間進行であるように装って,「このところの話はまだ抽象的でイメージがよくつかめないと思いますので,ここで具体的な内容をお話する (事例を紹介する) ことにします」というように転じて,自分の体験等を話すといいでしょう。
実際,大学で授業することがあまりない方は,概して学生の能力を高く想定し過ぎて,一般的で具体性の足りない話をしてしまう傾向があります。したがって,具体的な内容・事例をていねいに話すのはいいことです。
重要
: 授業に失敗しても,それを学生に気取られないこと。
導入
相手の興味/関心を喚起するような導入法を,工夫すること。
あわせて,授業の目的/到達点と授業内容 (メニュー) を,明確にアナウンスすること。
どこへ導こうとしているのかが見えない授業は,授業を受ける側にとってひじょうに苦痛です。
逆に,学習内容の鳥瞰図を予め与えられていると,学習はいちじるしくラクになります。
展開
テーマに関する状況や背景を明確にわかりやすく示すこと。
事例を多く用いること。
これによって,学習者は主題の意味を理解できるようになります。
一つのテーマを終えつぎのテーマに移行する際は,この移行を学習者にきちんと明示すること。
これをしないと,学習者は授業者の話が見えなくなり,授業を追うのが困難になります。
収束,レビュー
内容を適切にまとめる。
尻切れトンボで授業を終わらせないこと。
授業時間を越えて授業を続けることは,絶対ないようにする。
授業時間内で授業することは,ルールです。
授業時間を越えることは「失態」と心得ましょう。
態度/演技
授業を行う上は,「専門家/権威」としてパフォーマンスすることがだいじです。
学生が授業者を受け入れるのは,授業者を「専門家/権威」と認めるかぎりにおいてです。
「営業」で普通に使う敬語・謙譲語も,授業でそのまま使うと不自然になることがあります。
特に,「自分が適任かどうかわからない」のようなエクスキューズは,しないこと。
授業を受ける側にとっては,「だったら授業するなよ」となります。
エクスキューズでなくても,等身大の自分を示す方法はいろいろあります。工夫してください。
体の向き,アイ・コンタクト
簡単なようで実際にはちゃんとできていないことの一つに,「受講生の方にきちんと体を向け話す」があります。
慣れないうちは,壁や窓を見て話したり,一方向の受講生に向かって話しそれ以外には体や目を向けないということをやりがちです。
対策
この場合,形から入ろうとするのはなかなかうまくいきません。
ではどうするか?
「授業は対話だ」という認識をしっかりもつようにします。そうすると,自ずと相手を定めてメッセージを発するようになり,そして相手がちゃんと受け止めてくれているかどうか確認しようとします。
結果として,体の向け方,アイ・コンタクトが望ましい形になります。
話し方
ゆっくり話すこと。
他人の話についていくのは,それ自体たいへんなことです。
学習者がちゃんと自分の話についてきているかどうか,十分配慮してください。
「立て板に水」のような話し方は,話す本人にとっては気持ちがいいのですが, 聞き手を疲れさせることになり,よくありません。
間 (ま) を上手にとること。
特に,テーマが切り替わるときは,間をきちんとることがだいじです。
慣れないうちは,「最初から最後まで同じ調子で切れ目無く話す」をやりがちです。
実際,2, 3 秒の間もとれない授業者を,これまで多く見ています。
ジェスチャー,ボディー・ランゲージ
これがないと,授業が単調,あるいは息苦しくなります。
ユーモアを適切にまじえる
学習に神経を集中するのは疲れます。短時間しか保ちません。
学習者の生理に十分配慮してください。
ビジュアル・イメージの援用
はなしだけで,ストーリーに形を与えることは至難です。
ストーリーがつかめないはなしに,学生 (他者) はあえて付き合おうとはしません。
主題の対する学習者の理解を助け,さらに促進するため,ビジュアル・イメージを多用すること。
一般に,伝えようとする情報を上手にデザインすること。
プロジェクタを使用するプレゼンの場合
アイ・コンタクトを,特にしっかり心掛けること。
つぎのことを無意識にやりがちです(ほんとうに多くのひとがこれをやってしまいます)。注意しましょう。
スクリーンの方ばかり見る。
無用に頻繁にスクリーンの方を振り返る。
スクリーンの方を頻繁に振り返る動作と連動して,体が受講生に対し終始斜め方向を向く。
質疑応答について
簡単に考えがちで実はひじょうに難しいのが,質疑応答です。
日本の大学生は,大勢の中の1人のときは,質問しません。(もっとも,これは大学生に限りませんが。)
Yes, No の質問を全体に発し挙手で答えてもらう,というのも簡単には成立しません。
学生にとっては,挙手は授業者に対する「サービス」です。大勢の中に埋没できていると感じているときは,サービスしようとはしません。サービス精神の発揮が起こるのは,授業者に対する好意が強くなっている場合に限ります。(逆に,受講生の好意を獲得することに成功しているときは,Yes, No の挙手もすんなり出ます。)
ひじょうにしつこくやれば自分の意思を通すこともできるでしょうが,授業としてひじょうにみっともないものになることを覚悟しなければなりません。
学生のざわつきを静める方法
授業を始める前は,学生はざわついています。
学生がざわついたままで,授業を開始してはいけません。開始後もざわつきが続きます。
「静かに!」という注意は,学生のざわつきを静めるのに効果がありません。
(それに,これを言うのは,自分のプライドが傷つきますね。)
学生のざわつきは,つぎのようにすると静まります:
黙して学生を直視し,学生の方から自ずと静まるのを待つ。
授業に入ってから学生がざわつき出すのは,授業者の方に非がある(すなわち,授業に難がある)と考えましょう。