Up 成績評価と成長評価 作成: 2006-10-08
更新: 2006-10-08


    学習はプロセスである。
    このプロセスのどの切断面を評価の対象にするかで,「わかる・わからない」「できる・できない」が違ってくる。

    人により学習の進み方は違う。学習環境/学習経験によっても違ってくる。
    比喩として,つぎの3つの曲線グラフ ( f1(x) = √x, f2(x) = x, f3(x) = x2 ) を成長の3通りのパターンとして見てみる:


    この3パターンの成長は,ある時点で成績を同じくするものになっている。 しかし,その時点での能力 (潜在性/可能性) がつぎのように異なる:
成長速度 成長加速度 成長評価
f1(x) = √x 1/2 -1/4 減速傾向
f2(x) = x 1 0 一定傾向
f3(x) = x2 2 2 加速傾向

    同じ成績でも,能力は: f1 < f2 < f3
    では,これに至る間の成績はどうであったか。 成績は: f1 > f2 > f3
    特に,f3 などは,低学年時には「学習障害」と見なされそうな成績だ。 しかしそのときにも,成長加速度としての能力は,一番高いのである。

     註 : この成長パターン3つは,つぎのそれぞれの解釈ができる:
     (1) 個体差の3パターン
     (2) 学習環境/学習経験による3パターン
     (3) 個体差&学習環境/学習経験による3パターン
    例えば,「わかりやすい授業」ということで教師に邪道をやられたため後の学習が続かなくなるというのは,(2) の f1 である。


    学習評価では,成績評価に対し成長評価を区別しなければならない。
    成長評価は,長い時間スパンをとらなければ捉えられない。そしてそれは,その間の成績の変化の仕方として捉えるものになる。したがって,この評価は難しい。

    そして,学習内容によっては f3 のような形 (いわゆる「大化け」)である他ないものもある。 この場合は,長い「修行」期間を要する。
    特に,「要領よくやる」「ラクしてやる」が身についている者は,学習が続かない。

    一般に,専門性に近づくほど,「要領よくやる」「ラクしてやる」タイプは落ちていく。 低学年での成績,小中学校の成績があてにならないというのは,これにあたる。
    ──この事実を知らないで,成績のことで独りあさっての方向で悲喜こもごもする者が出てくる。


    なお,このようなことを聞かされると「勉強しなくていいんだ」みたいに受け取る者もいるので,間違いのないようはっきり言っておく。
    勉強してその都度形になるものもあれば,ずっと形にならずその間コツコツ勉強を続けなければならないものもある。そして,何もしないで成長することは決してない