Up 生き残り主義社会は「偽」文化の社会 作成: 2008-01-07
更新: 2008-01-07


    A,B,C3社は,はさみを商品にしている。
    3社には,品質が同等のはさみがある。そしてともに,2000 円の定価をつけていた。

    ここで,C社が生き残り主義に立つべきだと考えた。
    そして,はさみに 1000円の定価をつけることにした (価格破壊)。

    1000円の定価のはさみを実現する方法は,つぎの3通りである:
    1. 自分や下請けの生活を困窮にする。
    2. 定価 2000 円のはさみと同じ形の廉価品を,同一品と偽って 1000円で得る。
    3. 定価 1000 円が相当の品質のはさみを主要商品にして,1000円で得る。

    生き残り主義社会には,このいずれもが現れる。
    場合Bは,「偽」文化。
    場合Cは,「安かろう悪かろう」文化。

     註1. 「偽」とは,同じ形 (見掛け) をした廉価品を意味する。
    「偽」の要点は,「良品と同じ形のものを,廉価につくることができる」にある。
    良品と同じ形の廉価品を「良品そのもの」と偽って商品にすれば,これは「偽装」という詐欺である。
     
      2. 「百円ショップ」は,良品と同じ形をした廉価品であることを示すために,「百円」という値(ね)を示す。
    「百円ショップ」ではさみを買った者は,良品と同じ形をした廉価品であることを承知して,はさみを買っている。よって,家に帰ってそれが使い物にならないことを知っても,訴えることはしない。

    「Made in ○○」は,良品と同じ形をした廉価品であることを示すためにも,使われる。 この場合,「Made in ○○」を承知で買った者は,それが粗悪品であることを知っても,文句は言わない。


    ひとは廉価に慣れていく。
    「品質の良さ」の実現のために使われている経費を,評価しなくなる。

    C社に価格破壊をされたA,B社は,やがて C社のやり方に倣う。
    こうして,2000円定価のはさみが消える。

    ひとは「品質の良さ」に出会わなくなる。
    よって,「品質の良さ」を知らない者になる。
    ──「形 (見掛け) が同じなら,中身は同じ」「ブランド品が尊い」の文化へ