Up トラブル応接の作法 作成: 2007-04-02
更新: 2007-04-02


    経験の浅い場でのトラブル遭遇は,なにがなんだかわからない状態になって,慌ててしまう。 冷静を欠き,無闇にバタバタして,ひたすら当てずっぽうのことをやる。
    一方,経験を積むことによって,トラブルの輪郭・構造が見えるようになり,的確な対応がとれるようになる。

    結局は「経験あるのみ」「修行あるのみ」ということになるのだが,新人ガイダンスとして,トラブルに応接する作法をここで示すとしよう。 これは,トラブル遭遇で無用なことをせず,トラブルを学習機会として有効に使えるようにするためである。


    先ず,トラブルに遭遇したら,慌てない。そして,解決を急がない。
    なぜか? ──慌てることでよくなることはない。 そして,解決は,急ぐこととは関係ない。

    慌てない・解決を急がないために,どうするか?
    トラブルが自分を飛躍的に成長させる学習機会であることを思い起こし,トラブルとの遭遇を感謝する。 経験を積んでくると,ここはにんまりする場面だ。
    そこで,トラブルをしっかり出迎える。 姿勢を正し,「ようこそいらっしゃいました。しっかり付き合わさせていただきます。」と挨拶する。


    つぎに,トラブルの理解に進む。
    トラブルの解決は,論理的解決である。 この論理的解決にのるように,トラブルの論理を探る。
    強調するが,トラブルは走りながら考えて解決するのではない。 解決試行のシミュレーションができあがってところで,はじめて歩き出す。

    トラブルの理解ということで何をするかというと,つぎのことをする:

    • トラブルの内容を押さえる。──しっかりデータを取る。
    • 他のところで同種のトラブルを解決していないか,調査する。
      (インターネットが強力な調査ツールになる。)


    解決のヒントが見えてきたら,解決の手順書づくりに入る。
    アタマの中で想念するのではなく,きちんと文章や図にすることが肝要。
    文章や図にすることで,抜けや落ちが見えてくる。
    これを,できるところまでやる。

    そして,手順書にしたためた工程の実行に入る。
    実行では,必ず見込み違いが起こる。
    この見込み違いをまた「トラブル」ととらえて,上と同じことをする。
    このトラブルがフィックスされたら,つぎの手順へと進む。


    トラブルが大きければ,これは非常に根気のいる作業になる。 しかし,きちんと取り組めば,「滅入る作業」ではなく「やりがいのある仕事」になってくる。
    なぜなら,つぎのような意識が自ずと持たれてくるからだ:

      トラブルを否定的にとらえるのはこちらの勝手であって,「トラブル」とこちらが呼んでいるところのものはまぎれもない現実である。そして,その現実に対応できないのは,自分がこの現実に生きるにはまだまだ未熟だからだ。 ──トラブルは,自分のことだ。

    こうして,トラブルはそれの解決に向かう者を,謙虚にし,科学者に変えていく。
    そして,謙虚な科学者の手にかかれば,たいていのトラブルは解決される (と思い込むことが重要)。