Up 「トコロテン方式」 作成: 2006-11-01
更新: 2006-11-01


    日本の従来型大学は,学生を留年させない。
    追試・再試という装置をつくって,試験の不合格者を出さない。 著しくは,授業に出てなくとも単位を出したり,他のことをさせそのかわりに授業の単位を出したりする。
    「入るは難く出るは易い」ということで,(これとは逆の) 欧米の大学と対比されてきた。 また,「とにかく押し出してしまう」ということで,「トコロテン方式」と呼ばれてきた。

    めちゃくちゃであるが,これには (1) ほんとうにめちゃくちゃと,(2) ひとつの大学教育観に基づく<まじめ>の2つがある。 ──「めちゃくちゃ」は,「学生を落としたら後がめんどう」とか「落としたらかわいそう」。 「まじめ」は,「大学の勉学は,単位がどうのといったものではない」。

      むかし聞いたことだが,自分の授業に出てきた学生に対して「授業に出る暇があったら勉強しろ」と言った偉い大学教授がいたとか。


    わたしは学生のころ授業がわからなくて結局自分でやり直すタイプだったので,「授業に出る暇があったら勉強しろ」はけっこうしっくりくる。 ただしいまは,次の理由で,成績評価は厳格である:
    • 学校教員養成課程に籍をおいていて,「教員資格者」として卒業することになる学生の資質・能力にきっちり責任をもたねばならない立場にある。
    • 学生の学力低下や「勉強しない学生」の風潮が,この課程においても顕著。
    「追試・再試」とか「出席数で救済」の類のトコロテン装置が学校教員養成課程にあることにも,反対している。

      ちなみに,10/12 の読賣新聞に,司法修習 (司法試験を通った修習生が法曹資格を得るためのコース) の卒業試験でこれまでの「追試救済」をやめることになったという記事があった。──「司法制度改革の一環で司法試験合格者数が増加する中,今週の落第者が 107人と過去最高となるなど,修習生の質の低下が懸念されており,法曹の質の確保を厳格にすることにした。」(同引用)

    実際,教師,医者,裁判官など,人の命をあずかる資格を出す大学/課程が「成績不良者救済」などやったら,社会はたまったものではない。