Up 技術発達史──鶏と卵 作成: 2024-02-20
更新: 2024-02-20


    人類が今日の技術に至るまでには,ひじょうに長い時間がかかった。
    ひじょうに長い時間がかかったのは,昔の人間の頭が悪かったからではない。
    技術の発達がもともと長い時間を要するものであるから,長い時間がかかったのである。

    自動車エンジニアが,過去の時代にタイムスリップする。
    そのエンジニアがそこで自動車をつくれるかというと,つくれない。
    自動車工場が要るが,自動車工場をつくるには,自動車工場をつくる機械がいる。
    これは,「鶏が先か卵が先か」「缶の中に缶切り」の絶対矛盾構造である。

    技術の発達は,動力と機械の相互発達である。

    動力エネルギー源として石炭が石油の前になるのは,石炭は人力で採れるが,石油はポンプが要るからである。
    動力エネルギー源として木が石炭の前になるのは,枝は手で折ったり地上に落ちているのを拾えるが,採炭の方は色々道具が要るようになるからである。

    機関車が飛行機より前になるのは,機関車は石炭を燃料にできるが,飛行機は石油を俟たねばならないからである。
    大八車が機関車より前になるのは,大八車は木でつくれるが,機関車は技術が鉄を扱えるようになるまで俟たねばならないからである。

    金属製品を最初に現す機械は,木製機械である。
    木製品を最初に現す機械は,人力ないし他の動物の力である。
    これらの順序は,変えられない。