Up 中国のレアメタル政策 作成: 2024-03-09
更新: 2024-03-09


    レアメタル生産は,先進国が貧乏国に押しつける汚れ仕事である。
    中国は,これまで「先進国から汚れ仕事を押しつけられる貧乏国」を務めてきた。
    そして「大国」の(てい)を成すために,この構造を改めることに乗り出した。
    これまで無法状態に近かったレアメタルの生産と輸出に,メスを入れることになった。
    これは,国が行うこととして当然,ということになる。

    「無法状態に近かった輸出にメスを入れる」では,日本との関係にメスを入れることになる。
    日本は,世界で一番のレアメタル輸入国だからである。

    この流れと,中国の対外侵出行動を巡って日中が対立/敵対する状況が,重なった。
    中国のレアメタル対日輸出規制策に対し,日本は「制裁不当!」をキャンペーンしている。
    しかし中国側からすれば, 「何を言ってやがる」になる。

    日本人は正義はいつも日本にあると思っているが,国の経営はきれいごとではない。
    レアメタルを得ようとすれば,ずいぶんあくどいこともやることになる。
    中国はいま「汚職追放」が大きな政治題目になっているが,レアメタル生産・貿易と汚職が密接であることは想像に難くない。
    大所高所からよくよく吟味すべし。

清水·迫田 (2021), p.21 から引用
中国における主なレアアース生産・貿易管理関連政策



同上, p.22 から引用
中国における主なレアアース生産・貿易管理関連政策のポイント
主要な関連政策等 政策等のポイント
タングステン・錫・アンチモン・イオン型希土鉱物の国家保護性鉱種指定に係る通知(1991年) 国務院が発表。
レアアースは国家保護性鉱種として国家の管理下におかれることとなる。
希土類輸出許可制度の開始(1998年) 国家による管理の下でレアアースの輸出が進められる。
なお、2004年頃からは、輸出割当枠を削減する等、レアアースの輸出制限を強化
※2006年頃には輸出関税の賦課も開始される。
希土業界の持続的かつ健全な発展に関する若干の意見(2011年) 国務院が発表。
希土類を再生不可能な重要戦略資源として位置付け、希土産業の適切な管理(例えば、不法採掘の削減、深刻な生態環境破壊と資源浪費、輸出秩序の相対的混乱等の問題への対応など)を求める。
中国輸出管理法(2020年) 安全保障の観点から輸出を制限。
レアアースも規制対象となる可能性がある。
同法は、再輸出規制、みなし輸出規制に関する規定も含む。
※2015年の世界貿易機関(WTO)での敗訴を受け、従来のレアアース輸出管理制度は撤廃している
希土管理条例(意見募集稿)(2021年) レアアースの生産・流通等管理(トレーサビリティシステムの構築も含む)に関する包括的な法令。
レアアースのサプライチェーン管理を強化する意向がみられる。



  • 引用文献
    • 清水孝太郎・迫田瞬 (2021) :「レアアース (希土類) の需要動向と今後の展開可能性について」, 日本安全保障貿易学会 第32回研究大会 (2021-09-26I)