Up レアメタル生産は,自然破壊 作成: 2024-02-29
更新: 2024-02-29


    日本はレアメタルを輸入によって得ている。
    しかしレアメタルは日本に無いわけではない。
    日本にもある。
    レアメタルの「レア」は, 「存在する所 (国・地域) が限られる」ではない。

    ではなぜ日本ではレアメタルの生産が行われないのか?
    これはひどく高コストなので,賃金が高めの日本ではやれない。
    鉱毒の問題があり,さらにレアアースだと放射性物質に曝される危険性があるので,命の値段が高めの日本ではやれない。
    そして自然破壊になるので,自然尊重の気分が高めの日本ではやれない。

    レアメタルの産出は,ベースメタルの産出と事情が違うのか?

    レアメタルは,鉱床・鉱脈という形で存在するものではない。
    岩石の中に小さくそして分散して存在する。
    岩石中の密度がひどく小さいのである。
    レアメタルの「レア」の意味を求めるならば,「密度がひどく小さい」である。
    そしてこの「密度がひどく小さい」が,レアメタル生産を「自然破壊」にする。

    岩石中の密度がひどく小さいということは,まとまった量を得る代償として,膨大な量の岩石を掘り崩すということである。
    これは,自然破壊になる。
    つぎに,膨大な量の岩石を粉砕し,大量の水を使って,レアメタルを分離する。
    この水の獲得・使用も,自然破壊になる。
    そして,岩石廃棄物,廃液の処分が,自然破壊になる。

    採掘は,露天掘りをやる。
    塩湖かん水からリチウムを採る場合だと,広大な天日干し池をつくる。
    いずれも,サバクの出現である。


    先進国は,自分がやれない/やりたくないレアメタル生産を,後進国にさせる。
    一般に,先進国は自分ではやりたくないことを,金に物を言わせて後進国にやらせる。
    後進国の貧しさを利用するわけである。
    先進国は後進国をこのように使う。

    先進国は後進国を「援助」する。
    「援助」は,情けでしているのではない。
    自分がやりたくないことを相手にやらせるときは,相手を繋ぎ止めるために,いろいろ機嫌をとる。
    この機嫌とりに金を使うことを「援助」と称しているのである。

    その後進国は,国民不在の強権独裁政権の国であればさらに都合がよい。
    権力者を金で釣ればよいからである。

    かくして,レアメタルを生産している国は,賃金と人の命が安い国である。
    そして,自然破壊がどうでもよいことになる国である。

Gigazine" から引用:
リチウム化合物を含む石を採掘した後のオープンピット


Tom Hegen "The Lithium Series I" から引用:
リチウム化合物を含む塩湖かん水を天日干しして,リチウム化合物を残す。
濃度によって液体の色が変化



    しかしここに, 先進国の間で「経済安保」が言われ出した。
    そしてこんなトピックも:
産経新聞「欧州,「白い金」リチウム採掘ブーム──中国依存の脱却目指す」(2022-12-21) から引用:
フランス中部エシャシエールで,リチウム採掘が計画される採石場


    レアアース生産は,サバク生産である。
    現在サバク化を進行させているヨーロッパは,「経済安保」でさらにサバク化を進めることになる。

    日本では,経済新聞はこのフランスの例を先進的と持ち上げている。
    経産省の資源庁なんかも,そのうちレアアース国内生産構想をぶち上げるかも知れない。
    そのときは,財政困難で形振(なりふ)り構わずになっている地方自治体の中から,事業誘致に手を挙げるところが現れる。

    可能性が高いのは,北海道のどこかの町村──カジノ誘致,地熱発電所誘致,原発廃棄物処理場誘致,半導体工場誘致の流れから推して。
    先に「レアメタル生産は自然破壊になるので,自然尊重の気分が高めの日本ではやれない」と言ったが,北海道の町村にはこれは当てはまらない。