Up 大門 作成: 2021-06-18
更新: 2021-06-18


    仏教寺院建築は,(かなめ)が大門であることが見て取れる。
    実際,仏教寺院建築は「結界 sīmābandha」をつくろうとするものであるから,大門だけでよいのである。

    大門は,「ここから先は非俗」を威圧して示すことが機能である。
    威圧が機能なので,ばかばかしく大袈裟である。
    しかしまさにこの「ばかばかしく大袈裟」──こけおどかし──が肝心要なのである。


    仏教寺院は,その時代の大学である。
    大学は,このようにつくるものである。
    仏教寺院をデザインした者は,大学がなんであるかをよく分かっていた。

    大学は,これが結界であることを示す大門だけでよいのである。
    中の施設はボロボロでよい。
    実際,ボロボロであるほど,非俗感が増す。

    大学とは,世俗から己を分かつ結界の精神のことである。
    結界の精神を無くすと,大学でなくなる。
    この精神を発揚し強化し保持させる装置が,大門なのである。


    今日,大学はビルに引っ越すのが流行りである。
    その引っ越しは,大学が企業として立つことの宣言である。
    コンプライアンス (大衆正義) を信条にして,売れる商品を産む企業──になることの宣言である。

    かくして,大学は「社名に "大学" がつく企業」がこれの意味になるところにまで進化した。
    積極的に俗 (同調) に即くところとなり,非俗 (自由) は大学の銘ではなくなった。