Up 「自由」の定義 作成: 2021-07-30
更新: 2021-07-30


    「自由」とは何か?
    『自由の方法』論は,先ずここからである。

    「自由」の定義の肝心は,科学的な論述に堪えるということである。
    いまどき文学的・哲学的な「自由」論は無用である。


    生物は,自己表現・自己実現する存在である。
    自己同一性というものがあり,それを表現・実現しようとする。
    自然は,この自然の中で自己表現・自己実現を果たすことのできる生物を選択する。
    こうして,生物は進化する。

    そこで「自由」を,先ずは「自己表現・自己実現の自由」──自己表現・自己実現を妨碍・抑圧するものからの自由──と定める。
    そして,「自己表現・自己実現」の定義へと進める。


    「自己表現・自己実現」の定義は,情報科学の「創造=探索」の概念を借りることにする:
     「 効率のよい探索の手順は,その探索空間が十分に広いとき,真の創造性と区別できなくなる。」(Dawkins,1986, pp.120,121)

    即ち,「自己表現・自己実現」は,無から有をつくることではなく,<潜在=探索空間>の中に自己表現・自己実現の材料を探し,これはと思う材料を定めてそれを組む作業である。

    こうして,つぎが「自己表現・自己実現」の定義である:
      自分が欲するものを表現・実現しようとし,
      表現・実現の材料を探すにおいて,探索空間を定め,
      その空間に分け入って自分がよいと思う材料を定め,
      その材料を組んで所期のものを表現・実現する。
    そして「自由」とは,この営みを妨碍・抑圧するものからの自由である。


    妨碍・抑圧するもの,それは正義である。
    正義は,探索空間に善悪を定め,また材料の組み方に善悪を定め,悪を行う者を処刑・粛清するものだからである。


    引用文献
    Dawkins, Richard (1986) :
      The Blind Watchmaker: Why the Evidence of Evolution Reveals a Universe Without Design. Norton. 1986.
      日高敏隆[監修], 中嶋康裕・他[訳]『盲目の時計職人──自然淘汰は偶然か?』, 早川書房, 2004.