Up | 「自由」の定義 | 作成: 2021-07-30 更新: 2021-07-30 |
『自由の方法』論は,先ずここからである。 「自由」の定義の肝心は,科学的な論述に堪えるということである。 いまどき文学的・哲学的な「自由」論は無用である。 生物は,自己表現・自己実現する存在である。 自己同一性というものがあり,それを表現・実現しようとする。 自然は,この自然の中で自己表現・自己実現を果たすことのできる生物を選択する。 こうして,生物は進化する。 そこで「自由」を,先ずは「自己表現・自己実現の自由」──自己表現・自己実現を妨碍・抑圧するものからの自由──と定める。 そして,「自己表現・自己実現」の定義へと進める。 「自己表現・自己実現」の定義は,情報科学の「創造=探索」の概念を借りることにする:
即ち,「自己表現・自己実現」は,無から有をつくることではなく,<潜在=探索空間>の中に自己表現・自己実現の材料を探し,これはと思う材料を定めてそれを組む作業である。 こうして,つぎが「自己表現・自己実現」の定義である:
表現・実現の材料を探すにおいて,探索空間を定め, その空間に分け入って自分がよいと思う材料を定め, その材料を組んで所期のものを表現・実現する。 妨碍・抑圧するもの,それは正義である。 正義は,探索空間に善悪を定め,また材料の組み方に善悪を定め,悪を行う者を処刑・粛清するものだからである。
日高敏隆[監修], 中嶋康裕・他[訳]『盲目の時計職人──自然淘汰は偶然か?』, 早川書房, 2004. |