Up 「被曝者・被曝地差別」: 要旨 作成: 2016-04-27
更新: 2016-04-27


    戦後の歴史に,「被爆者差別」がある。
    差別の内容は,「被爆者は雇わない」「被爆者とは結婚しない」である。

    この差別は,悪意によるものではない。
    また,無知によるものでもない。

    被爆者は,「原爆病を将来発症するかも知れない者」「遺伝病をもった子をつくるかも知れない者」の意味を負わされる。
    そして,この意味は,不当ではない。
    実際,反原発の反核キャンペーンは,被曝の危険として,これをさかんに訴えているわけである。


    差別をする者は,被爆者に「原爆病を将来発症するかも知れない者」「遺伝病をもった子をつくるかも知れない者」の意味を見る者である。
    一般に,雇用者は,将来的に不安がある者は雇用しない。
    そこで,「被爆者は雇わない」になる。
    一般に,ひとは,将来的に不安がある者とは結婚しない。
    一般に,親は,子どもが将来的に不安がある者と結婚することを嫌がる
    そこで,「被爆者とは結婚しない」になる。

    人は,被爆者に同情しつつ,差別する。
    人は,同情と差別の矛盾を行動する。
    この差別を非難するロジックは,立たない。
    この矛盾に,止揚は無い。


    差別には,「被爆者差別」と併せてもう一つ,「被爆地差別」がある。
    これには,つぎの2タイプがある。

    ひとつは,被爆地産の品を危ないとして退けるものである。
    被爆地のがれき持ち込みの拒否や,被爆地産の食品の不買が,これである

    もう一つは,自分が被爆者と見なされないために,あるいは自分が扱う品が被爆地産と見なされないために,被爆地を差別するというものである。
    「自分は被爆地出身ではない」「この品は被爆地産ではない」を主張することは,裏返しとして,被爆地差別になる。


    以上述べてきたことは,「被爆」(原爆) を「被曝」(原発事故) に替えても,そのまま成り立つ。
    実際,被曝線量が高い場合,「被曝」は「被爆」と同列になる。
    特に,被曝を深刻化する言説は,被曝者差別・被曝地差別の問題を招く。

    そこで,被曝者差別・被曝地差別の問題を招かないためには,「この度の被曝は,心配無用」の方がよいことになる。
    嫌味な絵図であるが,生態学はこの絵図を取り上げるものである。