Up 「野戦病院」──それは変異株産生施設の形 作成: 2021-09-04
更新: 2021-09-04


    8月28日,大阪吉村知事が新型コロナの「野戦病院」を計画していることを発表した。
    それ以来,「野戦病院」を言い出す自治体が相次ぐ状況になっている。
    自民党総裁選に出馬しようとする岸田は,公約の中に
      「国主導で「野戦病院」の開設を進める」
    を措いた。

    さて「野戦病院」だが,これは負傷した兵士を送り込むところである。
    空気感染タイプのウイルス感染症にかかった兵士は,この中には送り込まない。
    ほかの者にうつしてしまうからである。
    ウイルス感染症にかかった兵士を送り込む先は,隔離施設である。
    そこは病院ではない。
    ウイルス感染症患者に対しては,自然に治るのを待つしかない──即ち,放っておくしかない。


    「野戦病院」の意味もわからないのが,政治家のインテリジェンスというわけである。
    「新型コロナ」はいろいろな点で人間を写すよい鏡になってきたが,この度は政治家のインテリジェンスの程度を再確認させてくれた。
    せめてもの収獲である。

    しかしこの収獲で済ませておくわけにもいかない。
    どうしても「野戦病院」をつくると言っているのだから,ここはその「野戦病院」の意味を考えるところである。


    新型コロナにかかった者を多数集めて密に置くと,その者たちの間で新型コロナウイルスが行ったり来たりする。
    体の免疫システムは,ウイルスの絶え間ない襲来と戦うことになる。
    免疫反応は,ただではない。
    体はこれで消耗する。
    消耗した体は,ウイルスの絶え間ない襲来に堪えられなくなる。
    こうして,自宅でおとなしくしていれば自然と回復したものが,「野戦病院」では重篤化することになる。

    医学者なら,この「野戦病院」を「空気感染」の知見を得ることに活用すべきである。
    さらに,変異株産生の実験施設に見立てるべきである。


    ウイルスは細胞に侵入して,分解する。
    細胞の DNA複製・タンパク質生成機能は,ウイルスの DNA/RNA(註) を大量に複製しつつそれを読んでタンパク質をつくる。
    タンパク質は,自動的に集合・結合してウイルスの成体を形成する。
    こうして大量のウイルス成体がつくられる。
    これが,ウイルスの繁殖である。

      註: ウイルスには,DNA型と RNA型がある。
    新型コロナウイルス,インフルエンザウィルスは RNA型である。

    さて,この複製では DNA/RNA の複製ミスが自然に起こる。
    「突然変異」である。
    変異株とは,このように確率的に自然に生み出されるものである。
    そしてこのなかに,体がこれまでつくってきた免疫を無効にするもの──以下,これを改めて「変異株」と呼ぶ──が現れるというわけである。

    変異株の出現は,確率事象である。
    即ち,「ウイルス DNA/RNA の複製n回に対して1回」というふうになるものである。
    よって,変異株を得る方法は,DNA/RNA 複製回数が膨大になるようにすることである。
    変異株産生施設をもしつくるとすれば,この考えでつくることになる。

    その施設はどんな形のものになるか?
    「野戦病院」が,まさにびったりの形になる。


    「野戦病院」の実現は,ひとがそこに入りたがるかどうかにかかっている。
    この「野戦病院」は,「隔離施設」であり「変異株産生施設」だからである。

    直近の「感染拡大」をもたらしている検査数の増加は,つぎがいちばんの理由である:
      《 陽性反応が出ても隔離措置にならず自宅療養で済むことになったので,気軽に陽性検査を受けられる》
    陽性反応が出たときは「野戦病院」送りということになったら,ひとは陽性検査を受けなくなるし,発症したときはこれを隠すことになる。

    翻って,「野戦病院」を唱えることは,「新規感染者」数を劇的に減らす効果がある。
    自治体の長や政治家がもしハッタリで「野戦病院」を唱えているのだとしたら,それはたいしたものである。