Up 「55.7兆円対策 過去最大」 作成: 2021-11-22
更新: 2021-11-22


    読売新聞, 2021-11-20


    これは,2020年度の3回の財政出動に続くものである。
    2020年度の財政出動の内訳は:
補正予算
(閣議決定)
第1次
(4月7日)
第2次
(5月27日)
第3次
(12月8日)
事業規模
(財政支出  
+民間融資等)
117.1 兆円
(48.4兆円  
+68.7兆円)
117.1 兆円
(72.7兆円  
+44.4兆円)
73.6 兆円
(40兆円  
+33.6兆円)
財政支出
(国費(真水) 
+財政投融資)
48.4 兆円
(33.9兆円  
+12.5兆円)
72.7 兆円
(33.2兆円  
+39.3兆円)
40 兆円
(32.3兆円  
+7.7兆円)
161.1 兆円
(99.4兆円  
+59.5兆円)
国費(真水)
(補正予算  
+地方支出等)
33.9 兆円
(27.5兆円  
+6.4兆円)
33.2 兆円
(32兆円  
+1.2兆円)
32.3 兆円
(20.1兆円  
+12.2兆円)
補正予算
(一般会計  
+特別会計)
27.5 兆円
(25.7兆円  
+1.8兆円)
32 兆円
(31.9兆円  
+1.1兆円)
20.1 兆円
(19.2兆円  
+1兆円)
債務
(国債発行  
+財政投融資)
38.2兆円
(25.7 兆円  
+12.5兆円)
71.2 兆円
(31.9 兆円  
+39.3兆円)
26.9 兆円
(19.2兆円  
+7.7兆円)
136.3 兆円
(76.8兆円  
+59.5兆円)

    ここで「財政投融資」は,騙しである。
    これは,「国債」と同じである。
    「財政投融資」の項目を立てるのは,「国債」の額が大きくなることに対する後ろめたさと,「国債」にノイズを入れてわかりにくくしたいという気持ちが,理由である。

    「債務」も,騙しである。
    返済するものではないからである。
    返済するものではないのになぜ「債務」ということばを使うのか?
    支出には,「財源」を立てねばならないからである。

    「事業規模」も,騙しである。
    「事業規模」は,「財政支出」に「民間融資」(民間金融機関による融資) を加えたものであるが,「民間融資等○兆円」はテキトーに言っているだけである。
    民間金融機関による融資額は,行政が決められることではない。
    「事業規模」の項目を立てるのは,民間金融機関に融資努力を促しているつもりである。
    そして,事業規模を大きく見せて,世の中を景気づけさせたいというわけである。


    国の財政は,なんでわかりにくく示されるのか?
    大衆は,国の財政は家計が単に大きくなったものだと思っている。
    しかし国の財政は,家計と同じように見たら,とんでもないデタラメをやっていることになる。
    そのように見られないために,わざとわかりにくくするのである。

    デタラメとは何か?
    国は金を造る,ということである。
    実際,国は,金が要ることになったら金を造る。
    「日銀の国債引き受け」がこれである。
    その「国債」も,実体はキーボードから入力されるビットデータに過ぎない。
    キー・タッチで,金が造られるわけである。


    このことは,学校では教えない。
    学校は,道徳を教えるところだからである。
    人は道徳で騙しておかないと,どんな悪さをするか知れない──というわけである。
    尤も,学校教員も道徳に騙されている口であるが。

    大衆は,その道徳心を以て,国の財政は国民の「血税」で営まれていると思っている。
    国の財政は,税を収入とし,これを遣り繰りして支出していると思っている。
    彼らは,「2021年度予算の税収 57兆4480億円」の文言を,あるいは目にしているかも知れない。
    しかし,これを近年の
     「 一般会計歳出 約100兆円,特別会計歳出(純計額) 約200兆円,合わせて 300兆円」
     「 社会保障給付金 (年金・健康保険給付費) 約70兆円,地方交付金 約20兆円,合わせて 90兆円」
    等と比べることを知らない

    彼らは,この度の「55.7兆円対策」「子どもに10万円」も「血税」で賄われると思っているほどに,底知れなくオメデタイのである。


    近頃は,「財政健全化」は誰も言わないものになっている。
    そのうちでもいちばん言わない者が,ほかならぬ政治家である。
    ポピュリズムの時代には,政治家はバラマキの要求を成績にするようになるのである。
    こういうわけで,財務省の者が「財政健全化」を発言したら,大炎上となる。( 「矢野財務次官バラマキ批判寄稿 波紋」)

    しかし,「財政健全化」が正しいかというと,そうではない。
    国の財政は,家計とは違う。
    いまはどの国も,財政は<金造り>でやっている。
    これは,国が「金」とは何なのかをわかってきたということである。

    金の本質は,<幻想>である。
    金に実体は無い。
    だから,「税収 60兆円割れ」と「社会保障給付金と地方交付金 合わせて 90兆円」が並び立つというわけである。

    財政は,算数で考えるものではない