Up 生物と無生物の間 : 要旨 作成: 2019-04-20
更新: 2019-04-20


    生物の発生は,無生物の「進化」の一局面である。
    よって,生物を無生物から分断する境は,立たない。
    生物と無生物の間は,連続している。

    生物は,「自己再生する系」が上位概念になる。
    「自己再生する系」は,「自己組織する系」が上位概念になる。

    この「自己再生」「自己組織」に,「能動的」の意味は無い。
    実際,系は,成るように成るというものである。
    「能動的」も,「成るように成る」のうちである。

    科学は,この「成るように成る」を観じて,「系のダイナミクス」を主題化する。


    最も大きく考えた「系のダイナミクス」が,「自然」である。
    自然現象は,はじめは無生物であり,そのうちから生物が進化的に発生する。

    無生物には,生物のように見えるものがある。
    例えば,川の流れの中に,渦の生滅が一定パターンで繰り返されるのを見ることがある。
    小さな渦が大きな渦へと拡がり,そして消える。
    そしてこの過程の中に小さい渦の発生があり,同じ展開が繰り返される。
    これは,<生まれ,成長し,子を産み,そして死ぬ>のように見える。

    実際,無生物から生物への進化は,この種の<生まれ,成長し,子を産み,そして死ぬ>の進化である。
    「渦」の素材を<雑多な分子>でイメージせよ。


    系は,一定であることができないものである。
    定常に見えるものは,<無常の定常>であり,「新陳代謝」がこれのダイナミクスである。

    系は,ランダムであることができないものである。
    ランダムは,シンクロする。


    進化は,過去の上塗りである。
    過去のものは,姿をとどめない (「絶滅」)。
    よって,生物の発生は「突発」のように見えることになる。

    生物の発生は途方もないこと──あり得ない偶然・奇跡──のように見えるが,それは「進化のダイナミクスの過激」と「億年単位の時間」をイメージできないためである。