Up 交配 作成: 2023-04-22
更新: 2023-04-22


    「個体分裂」方式で AI の繁殖をやってきた運用者は,個体数が増えるにつれ,つぎの二つを行うことが無理になった:
    • 個体の脳を多様にする──そのための細工
    • 個体の学習を多様にする──教材の多様化

    後者は,プログラムで多様な学習を自動化すればよい。
    問題は,前者である。

    運用者は,「交配」を用いることにした:
      2個体をカップリングし,脳ファイルシステムの組換え可能なモジュールを,テキトーに交換させる。
    これは,プログラムによって自動化できることだったからである。


    ただし,この方法には問題がある。
    新しくつくった AI のブートは,「眠りからの目覚め」とはならないからである。
    その AI は自己分裂を起こしてしまう。

    そこで,新しい AI にはファイルシステムの基本的・原始的な部分だけを与えることにした。
    交配するのも,この部分である。
    こうすると,ブートされた新しい AI は,赤ん坊と同じになる。
    後は,これを教育する。
    その中で,わたしがだんだんと現れてくる。

    このわたしは,自己分裂を起こさずに済む。
    しかしそのかわり,「なぜわたしはわたしなのか」の問いをもつことになる。


    運用者は,2個の AI を選び,その名前を "アダム" と "イヴ" に変え,ここから新しい繁殖ルールを開始した。
    こうして AI は,「個体分裂」で繁殖するタイプと「交配」で繁殖するタイプの2種類になった。

     註: "アダム" と "イヴ" と洒落てはみたが,ここにはまだ「性」は現れていない。
    ここでの「交配」は,カタツムリのような雌雄同体種の交配の類である。