Up 「元素誕生」ストーリー 作成: 2017-11-05
更新: 2017-11-08


    「有機物出現」は,「地球誕生」の内容になる。
    「<生命>の起源」の問いは,「地球誕生」の問いに進む。

    「元素出現」は,「宇宙誕生」の内容になる。
    「<物>の起源」の問いは,「宇宙誕生」の問いに進む。


    「宇宙誕生」の問いが科学の問いになったのは,近年である。
    すなわち学者が,つぎのことをもとに,「膨張する宇宙」を定めるようになった:
      1. 「膨張する宇宙」が観測された
      2. 「膨張する宇宙」が理論から導かれる
    「膨張」を考えることは,「膨張のもと」を時間遡行して考えることである。
    「膨張のもと」としてひとが考えられることは,「点・起爆」しかない。
    そしてこの「点・起爆」のストーリーをつくれば,それはすなわち「宇宙誕生」のストーリーということになる。
    こうして,「ビッグバン」ストーリーがつくられた。


    「ビッグバン」ストーリーでは,「元素誕生」はつぎのようなストーリーになっている:

      Wikipedia「元素」から引用
    ビッグバンにおける元素生成
    ビッグバン理論では、すべての根元物質はビッグバン開始から約10分間で創造された、とされる。 (現在、ほとんどの科学者から支持されていると言ってもいい)ビッグバン理論では、宇宙開闢では非常に高いエネルギーの解放が起こり、ビッグバンと呼ばれる大爆発とともに急速な膨張を起こしながら温度を下げ、エネルギーが転移してすべての物質が生まれた、というのである。
    近年の物理学者の説明によると、ビッグバン発生直後は高エネルギーのみで宇宙は満たされていたが、1秒経過後には温度が1000億度程度まで下がり、陽子と中性子が生成され、この時点では電子やニュートリノと反応を起こして陽子と中性子は双方向に変化しつつ平衡状態にあったとされる。しかしこの環境下では、陽子と電子が反応するにはエネルギーを要するのに対し、中性子は電子と反電子ニュートリノを放出して容易に陽子へと変化した。そのため、膨張による温度低下とともに相対的に陽子の数が多くなってゆく。
    100秒程が経ち温度が100億度前後まで下がると、陽子と中性子が結びつき始め、重水素の原子核が生成され始め、さらに質量数4のヘリウム4Heへ原子核反応を起こす。ヘリウム原子核を構成すると中性子は安定し崩壊は起こらなくなる。この合成が進行した頃、陽子と中性子の個数比は7対1であったため陽子が大量に残り、これが水素となった。宇宙がさらに冷えて電子を取り込み元素となった際、この陽子と中性子の差から、水素とヘリウムの個数比はほぼ12対1となった。これらビッグバンにおける元素生成は約10分間で終了したと言われる。
    ただし、ビッグバンで生成された元素には、微量のリチウムも存在したと考えられる。高エネルギー下で元素が生成される際、若干ながら三重水素3Hやヘリウム3 3Heが生じ、これが4Heと核融合することがあり、これが質量数7のリチウムの同位体となった可能性が指摘された。宇宙誕生直後に生まれた非常に古い第一世代の星を観測すると、恒星内での核融合や外部からの元素取り込みが無いため重元素はほとんど観測されないが、有意なリチウムの含有が確認された例があり、これはビッグバンで生成された元素だと考えられている。ただし、理論と観測ではその量に差があり、ビッグバン理論には修正が求められる可能性がある。

    恒星内での核融合
    ほとんどが水素かヘリウムであったビッグバンで生成された元素は、そのままでは宇宙の中に散ってしまっていたが、やがて密度が高い領域で集まり、高温高圧となった部分が第一世代の恒星となり核融合反応が始まった。最初の恒星は、ビッグバンから2億年後に生まれたと考えられている。恒星の中では陽子-陽子連鎖反応によって水素(陽子)がヘリウムへ核融合を起こし、これによって生じるエネルギーで輝く星を主系列星という。なお、恒星内で炭素・窒素・酸素を媒介に陽子がヘリウムへ変化するCNOサイクルもエネルギー発生のメカニズムであるが、この反応では炭素などの元素は基本的に増加しない。
    恒星は水素を消費しながらエネルギーを生じるが、それが進むと中心核にはヘリウムが溜まり、水素の核融合反応は核の周辺部で行われるようになる。そしてある程度のヘリウムが蓄積され温度が1億度に達すると中心核でヘリウム3個の核融合であるトリプルアルファ反応が起こり、炭素が生成される(ヘリウム燃焼過程)。比較的軽い星では膨張し赤色巨星となり、やがて星間ガスとして元素を放出しながら白色矮星となる。
    質量が太陽の3倍程度までの恒星では、核融合反応で生成される元素は炭素止まりだが、より大きな星では核に溜まった炭素や酸素を使う反応(炭素燃焼過程や酸素燃焼過程)へ進み、ネオンやケイ素等を経て最終的に鉄までが生成される。安定した鉄の原子核は電気反発力が強く核融合を起こさないため、恒星の中心部ではエネルギー発生が止まる。この段階で恒星は鉄を中心に外側に段々と軽い元素が多層を成し、たまねぎのような構造となる。これが超新星爆発を経て放出される。

    中性子捕獲による元素合成
    恒星内の核融合反応では、鉄より重い元素はほとんど生成されず、ごくわずか生じてもすぐに分解してしまう。これらは、原子核が電気反発力を生じない中性子を獲得するという全く別の方法で生じるが、そのような反応が可能となる場所は限られる。ひとつは、既に鉄などの重い元素を含む第二世代の恒星内であり、もうひとつは超新星爆発の瞬間である。
    太陽よりやや重い程度の恒星(中質量星)では、中心部の核融合で生成される元素は炭素までに止まる。このような星の晩年には、メカニズムははっきり分かっていないが剥き出しの中性子が生じ、第二世代星が元々含んでいた重元素がこれを捕獲する。すると、同じ陽子の数ながら中性子数が多い同位体となる。これが不安定な同位体となると、中性子がベータ崩壊を起こして陽子に変化し、原子番号がひとつ多い元素へ変化する。この反応が繰り返され、鉄よりも重い元素が生成される。中質量星の内部では比較的中性子の数が少なく、捕獲とベータ崩壊が順次繰り返される。これは「遅い過程・s過程」(s-プロセス、sはslowの略)と呼ばれる。この過程において、中性子捕獲は数万年から数十万年に1個であり、ビスマスまでの重元素を生成すると考えられる。
    「遅い過程」に対し、中性子数が多くベータ崩壊の機会を与えない環境が、超新星爆発である。太陽の10倍以上の質量を持つ恒星では、その末期になると中心部に中性子のかたまりが形成され、やがて重力崩壊による大規模な爆発を起こして終焉を迎える。このII型に分類される超新星爆発の際も中性子が発生し、恒星内の元素に中性子捕獲を起こす。しかもこれは数秒間という短い時間に大量の中性子を供給し、不安定な同位体にベータ崩壊を起こす暇を与えず、質量数をどんどん増やす合成を行う。そのため、高質量数となった同位体は宇宙空間へ放出された後に、崩壊すると原子番号が高い元素へ変換される。これは「早い過程・r過程」(r-プロセス、rはrapidの略)と呼ばれる。この過程では、観測からウランより重いカリフォルニウムの生成が確認されている。しかしこのメカニズムも不明な点が多い。

    その他の元素合成
    過程の詳細は判明していないが、他にも元素合成を起こす宇宙の現象がある。質量が太陽程度の恒星が中性子星と連星になっている場合、その質量が太陽の約1.4倍になるとIa型超新星爆発を起こし、重い元素が生成される可能性が指摘されている。
    また、中性子星同士が衝突した際にも元素合成が生じるとの指摘もある。恒星を舞台に元素合成する理論だけでは説明できなかった地球上に存在する金や白金などの量について、イギリスのレスター大学とスイスのバーゼル大学の協同チームはスーパーコンピュータを用いて試算し、中性子星同士が衝突することで生成・放出される説を発表した。