Up 量子力学の「波」のイメージ 作成: 2017-11-03
更新: 2017-11-05


    量子力学のスケールでは,物は存在しない。
    このスケールでは存在はどんなふうになるかというと,「波」になる。
    但し,物は存在しないから,「媒質」の無い波である。
    「何かの波」ではなく「波自体」ということになる。
    「波」といっても,日常語でいう「波」ではない。
    これは,関数として与えられる──「波動関数」。

    「波動関数」を「そういったものか」と了解するには,実際に量子力学にあたるしかない。
    そこで,了解の助けになりそうな「波」のイメージを,ここにひとつ提示しておこう。


    夜,横に長い壁の左端から右端へ,懐中電灯の照射を走らせる。
    走ったのは,「物」ではない
    これを,壁の各点の明暗が左から右に伝わっていったと見る。
    これは, 「波」である

    この「波」は,どんなふうに記述できるか。
    壁の左から右にx軸,縦にy軸を引いて,つぎの関数に表すのが,素直な方法である:
      壁の各点の位置 (x,y) と時間tの対 ((x,y), t) に,
      時間tのときの位置 (x,y) の明るさを対応させる
    ここでさらに,懐中電灯の照射が壁の中まで透るイメージで,壁の奥行きの次元まで考えるとしよう。 ──奥行きの方向にz軸を引いて,つぎの関数に表す:
      壁の各点の位置 (x,y,z) と時間tの対 ((x,y,z),t) に,
      時間tのときの位置 (x,y,z) の明るさを対応させる

    この記述は,壁・懐中電灯を場面から消す効果をもつ。
    実際,位置,時間,明暗が,関数の項である。
    そして壁・懐中電灯が無くなれば,明暗も「明暗」であるわけにはいかない。──<何か>になる。

    この関数──位置と時間から<何か>への関数──を,改めて「波」と見なす。
    この「波」には,物がない。
    「物無しの状態遷移」といったふうである。

    量子力学の存在であるところの「波」は,この「時空間の状態波」がとっかかりのイメージとなるようなものである。