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Montgomery & Bikle (2015), p.173.
‥‥‥ 急性の炎症は、要するに、治癒過程の重要な一部なのだ。
だが軽度の慢性的炎症はまた別の話だ。
この場合免疫系の攻撃力は、まったく正常で健康な組織に向けられている。
免疫細胞は,傷が治癒を必要としていると誤って思いこみ、サイトカインを絶え間なくほとばしらせて、さらに免疫系の活動を引き起こす。
炎症部の免疫細胞は破壊物質を放出し続け、やめ時がわからない。
興奮が興奮を呼び、一種の生物学的な無秩序状態が発生する。
やがて、おそらく数年後には、慢性的な炎症にさらされた組織はぼろぼろになってしまう。
傷口や感染箇所に集まったサイトカインと免疫細胞の大群は、局所の環境を細胞レベルで非常に活発な場所にする。
このプロセスに来る日も来る日もスイッチが入ると、癖になる。
修復する傷がなく、したがって炎症プロセスの終点がないので、免疫細胞とサイトカインは居座って、細胞分裂の速度を異常に高くする。
細胞が分裂するたびにDNAがコピーされる。
しかしそのうち、コピーミスが発生する。
問題のないミスもあれば修復できるものもあるが、中には重大な結果をもたらすものもある。
たとえば細胞の増殖が抑制できなくなる──つまり、がんへと進行してしまうような。
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引用文献
- Montgomery,D.R. & Bikle,A. (2015) : The hidden half of nature ─ The microbial roots of life and health
W. W. Norton Company, 2015.
片岡夏実[訳]『土と内臓──微生物がつくる世界』, 築地書館, 2016.
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