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Montgomery & Bikle (2015), pp.171,172.
自分の身体が完全に自分だけのものではないことを受け入れるなら、免疫系の二重性を矛盾なく説明できる。
いくつもの微生物景観から自分の身体ができていると考えてみよう。
腸の河川流域、髪の毛の森、乾いた足の爪の砂漠、目の空。
これらの場所には相互に影響しあう住人が多数いて、地球上のあらゆる生態系と同様に活発に動いている。
それは同時に、目に見える生態系で起きているいつもの自然のプロセス──資源の不足と充足の循環、激変、捕食と被捕食の関係、温度と湿度の勾配など──に支配されている。
私たちにとってもっとも利益にかなうのは、身体の生態系に棲息するものたちが、焦土作戦を採用するために免疫系の引き金を引かないことだ。
そんな事態は人間にとっても微生物にとっても災難だ。
そこで、正当に評価がされていないけれど、免疫系の本業は、体内外に無数にある生態系と、その居住者の健康を保つことだと考えてみる。
もちろん時には、急激な炎症を引き起こして、門の前に現われた蛮族を撃退する必要もあるだろう。
しかし全般的に見て免疫系の最優先目的は、身体の生態系が正しく──私たちのために──はたらくようにすることだ。
このような見方は、マイクロバイオームに関する新しい発見ときわめて一致する。
哺乳類の免疫系は、身体に長く棲んでいる微生物との関係を監視し、良好に維持するように進化したという証拠が積みあげられている。
そしてあらゆる共生関係と同じで、微生物が繁栄するとき、私たちも繁栄する。
メカニズムや細かい部分はまだ完全にはわかっていないが、マイクロバイオームの混乱が、多くの慢性疾患と自己免疫疾患にかかりやすくなる根本的原因の中にあるようだ。
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引用文献
- Montgomery,D.R. & Bikle,A. (2015) : The hidden half of nature ─ The microbial roots of life and health
W. W. Norton Company, 2015.
片岡夏実[訳]『土と内臓──微生物がつくる世界』, 築地書館, 2016.
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