|
Montgomery & Bikle (2015), pp.172,173.
リンパ節の腫れ、痛み、発熱は、免疫系が病原体と戦っていることのわかりやすいサインだ。
そしてすでに述べたように、炎症は普通は健康のしるしなのだ。
夕食用のニンジンを刻んでいて、指を切ってしまったとする。
どんなにきれいでも、包丁やニンジンやまな板は細菌の巣だ。
刃が皮膚を破ると細菌がなだれ込み、免疫系も同時にはたらき始める。
近くの血管は意図的に漏れだし、免疫細胞が血流から飛び出して、皮膚に常駐する別の免疫細胞と合流できるようにする。
傷口の免疫細胞はサイトカインという物質を分泌して、情報伝達をしあうとともに、離れた免疫細胞にも情報を伝える。
傷口に招集された免疫細胞のあるものは身体に侵入した細菌を殺し、またあるものは傷を治す工程に取りかかる。
炎症は、傷のまわりの赤みと痛みとして現われる。
血液と免疫細胞が傷に引き寄せられるからだ。
その後、ある種のサイトカインが、傷口のまわりの皮膚細胞と血管に、包丁で切られた部分を再生してふさぐことを促す。
炎症を起こす免疫細胞は、解体作業員と改装作業員と清掃作業員を兼業したようなもので、全速力で一心不乱に建物を出たり入ったりする。
だから急性の炎症は、要するに、治癒過程の重要な一部なのだ。
|
|
引用文献
- Montgomery,D.R. & Bikle,A. (2015) : The hidden half of nature ─ The microbial roots of life and health
W. W. Norton Company, 2015.
片岡夏実[訳]『土と内臓──微生物がつくる世界』, 築地書館, 2016.
|