Up CO2 排出ロンダリング 作成: 2024-03-15
更新: 2024-03-15





    石炭火力発電所は,「脱炭素」イデオロギーからの非難をかわすことに腐心する立場である。
    「石炭火力アンモニア混焼」は,この腐心の類である。
    「脱炭素」の側にいることをポーズしようというわけである。

    ひとはこのポーズに騙されてくれる。
    ひとは,アンモニア燃料の由来を考えようとするものではないからである。


    アンモニアの工場生産は,ハーバー・ボッシュ法と呼ばれる製法による:
     「 鉄を主体とした触媒上で水素と窒素を 400–600 °C、200–1000 atm の超臨界流体状態で直接反応させる ‥‥‥ N2 + 3 H2 → 2 NH3」(Wikipedia)

    ここに「400–600 °C、200–1000 atm の超臨界流体状態」が出てくるが,これはどうやって実現しているのか?
    もとをたどれば化石燃料になるエネルギーを消費しているのである。
    しっかり化石燃料を燃やし,CO2 を排出しているわけである。

    窒素・水素の製造工場も,消費しているエネルギーは結局化石燃料由来である。


    石炭をアンモニアに換えることは,石炭を無くした分だけアンモニアを増産することである。
    そして,二重手間をやっている分,CO2 排出は却って増えることになる。

    しかしひとは,石炭火力発電所は石炭をアンモニアに換えれば脱炭素になると思う。
    ひとは,CO2 排出が自分のところから無くなれば,それで「脱炭素」なのである。
    実際,このアンモニア製造の CO2 排出は,他のところ (外国) でやることになる。
         読売新聞, 2022-07-29「三井物産、メキシコ湾岸で燃料アンモニア生産へ…日本・アジアの火力発電所向け」


    「脱炭素」「エコ」とは,こういうものである。
    「脱炭素」「エコ」はビジネスであり,形はマネーロンダリングと同じである。
    金の持ち主をくるくる変えて金の出処をわからなくするのが,マネーロンダリング。
    燃料形態をくるくる変えて,CO2 排出の出処をわからなくするのが,「脱炭素」「エコ」である。