Up 「山斜面」にパネルを設置するとは 作成: 2021-07-23
更新: 2021-07-23


      毎日新聞, 2021-06-27
    全国で公害化する太陽光発電
    出現した黒い山、田んぼは埋まった

     太陽光発電設備の設置が引き起こす景観や自然破壊などの問題が各地で深刻化している。毎日新聞が47都道府県を取材したところ、8割がトラブルを抱えていることが分かった。‥‥
    ドーム17個分、巨大パネルに覆われた黒い山
     「晴れの国」で知られる岡山県。5月下旬、日射条件が良く、白桃が名産の赤磐市に入ると、緩やかな山の斜面に墨を流し込んだように真っ黒な太陽光パネルが広がっていた。
     4月、石油元売り大手の出光興産がこの地で大規模太陽光発電所(メガソーラー)の稼働を始めた。東京ドーム17個分に相当する82ヘクタール [0.82平方km] にパネル32万枚が並ぶ。年間発電量は6500万キロワット時に上り、約1万3000世帯分の電気を生み出す巨大発電所だ。
     だが、周辺住民によると、2018年と20年にパネルを設置した斜面から土砂が崩落する事故が発生。‥‥
     出光に説明を求めると、「(土砂崩落が起きた)18年当時は調整池などの防災設備が建設途中だったが、現在は想定外の豪雨にも耐えられるよう追加工事をしてパトロールも実施している」という。水質や農作物への2次被害については「第三者機関で水質の異常を随時調査しているが、稲の発育と濁水の因果関係は答えられない」としている。

      デイリー新潮, 2021-06-27
    熱海土石流、地元で囁かれる“人災”説
    太陽光パネルで地盤が脆弱に? 運営会社の言い分は
    ‥‥「太陽光発電の施設に降った雨水は、土砂崩れのあった逢初川とは別の方角に流れるよう傾斜をつけて工事をしたので、盛り土崩落とは無関係であることを強調したい。10年以上前に、太陽光発電の敷地を含む40万坪の土地を購入しましたが、その一部に崩落した盛り土があるということは知らず、びっくりしている。盛り土が出来上がった後に購入したわけですから、欠陥のある土地を売りつけられたのならば、前所有者の責任を追及しないといけないかもしれない」‥‥


    日本では,太陽光パネル設置場所を「日照条件のよい平地」に求めるのは,ひどく難しい。
    そんなところは,既に人の生活場所になっている。
    土地の購入も,発電事業で見込まれる収益と見合わない。
    そこで,太陽光発電で起業しようとする者は,山の斜面をパネル設置場所にすることを考え出す。

    しかし「山の斜面」ということばはあるが,山に「面」なんか無い。
    山は川の上流であり,雨水の浸食場所である。

    こうして,パネルを設置するためには,面をつくらねばならない。
    山を削って面をつくるのは,経費・技術・物理のすべての面から,不可能である。
    よって,盛り土で面をつくることになる。

    木を伐採し,雨水の侵食谷に土を(かぶ)せる。
    事業者は,これで斜面の整地が成ったと思う。

    しかし,雨水の侵食谷は雨水の流路である。
    水の流れの上に土を被せたらどうなるか。
    子どもの頃にこれで遊んだ者ならわかるのだが,土は水に流されるのである。


    盛り土が出来上がった後に購入したわけですから、欠陥のある土地を売りつけられたのならば、前所有者の責任を追及しないといけないかもしれない」?
    こんなふうなことばが出てくるのは,子どもの頃に土遊びをしたことがないからである。
    盛り土の土地に,欠陥のある・ないは,ない。
    盛り土の土地はすべて,欠陥のある土地である。

    しかも,太陽光パネルの下は沙漠になる。
    盛り土であることに加えてさらに沙漠になるのだから,雨水に耐えられるわけがない。


    想定外の豪雨にも耐えられるよう追加工事をしてパトロールも実施している」?
    そんな追加工事は,存在しない。
    パネル設置場所に「山の斜面」を使うということは,欠陥のある土地であることを承知で,リスク・テイクの構えで使うということである。

    しかしこの場合の「リスク・テイク」は,通用しない。
    土砂崩落のリスクは,他の者が被ることになるからである。


    とはいえ当分は,道理に無知な事業者が「山の斜面」に太陽光発電所をつくっていくことになる。
    利権政治が,これを支援する。
    そして大衆は,「クリーン・エネルギー」「再生エネルギー」のことばに騙される。

    こうなるのは,ひとは自分で痛い目にあって初めて学習するものだからである。
    是非も無し。