Up 管理者が法になっている現状 作成: 2009-01-07
更新: 2009-01-07


    ネットワークの監視では,管理者が法になっている。
    実際,「監視ポリシー」とか「監視規準」といったものは存在しない。
    管理者は,自分の裁量で (自分が「これで問題ない」と思う形で) ネットワークの監視作業を行う。

    この裁量が簡単な常識/良識の上に乗せられるようなものなら,問題はない。 しかし,事実はそうではない。 ネットワーク監視は,これを合理化しようとすれば,論点がいくつも出てくる。 何よりもそれは,プライバシー侵害の問題を孕む。

    この問題が深刻に考えられてきた風が見えてこないことの一因に,IT企業が「ネットワーク管理」の文化醸成をしているということがある。
    その「ネットワーク管理」は,営利企業のネットワーク管理である。 営利企業のネットワークは,経営者と雇用者の契約の趣で,プライバシーのないネットワークになっている。 実際,「企業は経営者のもの」の含意として「ネットワークは経営者のもの」である。

    国立大学のネットワークは,これとは違う。
    「教育・研究の自由」の含意として「ネットワークの自由」がある。

    そこで,国立大学のネットワーク管理者は,営利企業のネットワーク管理者がもたない問題であるところの,プライバシーの問題をもつことになる。 この問題の考え方は,IT企業からは発信されてこない。 国立大学自身が考えねばならない。

    強調するが,ネットワーク監視とプライバシー保護の関係は,単純な問題ではない。 ──特に,「常識/良識が解決を導く」という問題ではない。 (この場合の「常識/良識」の想いは,ひとによってとんでもなく違ってくる。)

    翻って,ネットワーク管理者は,自分が立たされている立場の危うさを,よくよく考えねばならない。