Up | English | インターネットの管理体制 | 作成: 2002-08-02 修正: 2002-08-02 |
‥‥ 意外に知られていないことだが,インターネット全体の運営については,制度や法律の上での保証はないのである。
今のインターネットは,一部の政府,一部の技術者,そして一般企業や法律家といった立場に分かれた人達の間の微妙な力関係の上に運営されている。例えば,ドメイン名とIPアドレスを対応付ける DNS (domain name system) の根幹であるルートDNSは,インターネットの立ち上げにかかわった13人の技術者のグループが,今も管理を続けている。 すでにそのうちの1社は破たんしているのだが,体制そのものは変わっていない。ルートDNSが安定的・中立的に運用されるかどうかは,彼らの良識に任されている。 一方で,ルートDNSのデータベースの書き換えの権限は,米国商務省が一手に握っている。 「jp」や「com」,「net」などのトップ・レベル・ドメインをルートDNSで新しく増やすには,商務省の承認が必要だ。歴史的な経緯とは言え,今や世界中で使われているインターネットのドメイン名が,実は米政府の意向次第というのはあるべき姿とは言えない。 肝心のドメイン名やIPアドレスの総合的な管理は,一般企業やエンドユーザーからの代表も入った組織 ICANN (Internet Corporation for Assigned Names and Numbers) が担当している。ICANN はインターネットの中央政府のような組織。だが,それを支持する人,しない人,さまざまである。現在も,ICANN やルートDNS の管理形態,政府の役割などを改革しようとして,それぞれの立場の人が激論を戦わせている最中である。 各国政府が主体となる国連のような大がかりな組織になるか,インターネット初期のように少数の技術者のグループに管理の権限を大幅に戻すか。どちらにしても今の管理体制を維持するというシナリオはない。大改革が避けられない状況だ。 仮に,国の権限が大幅に強まった場合,国ごとのエゴでインターネットの一体性が失われ,現在の姿とは大きく変わってしまうかもしれない。そうでなくても改革の行方は,意思決定の速さや安定運用の保証の有無,運用トラブル時の責任の所在を左右する。すべ.てのユーザーに重大な影響がある。 |