Up Winny 抹殺ムーブメントは,ラッダイト・ムーブメント 作成: 2006-12-17
更新: 2006-12-17


    産業革命での機械の普及は,仕事が機械にとって代わられる手工業者・労働者の失業・失職を含意した。 そして,ラッダイト運動 (Luddite movement) と呼ばれる機械破壊運動が起こった (1811〜1817, イギリス中·北部織物工業地帯)。

    情報革命は,「自分が拠って立ってきた従来型メディアが,ネットにとって代わられる」タイプの業種の危機を含意する。
    このような業種の代表的なものがマスコミで,ネットと折り合う方法,ネット対応型に自らを切り換える方法を,ずっと模索している。

    インターネットのキラー・アプリケーションとして WWW と並ぶものに,P2P がある。 Winny は,P2P ソフトウェアで,ファイル交換/共有の方法に優れている。そしてこの優れた方法のうちには,匿名性保持の方法が含まれている。

    この Winny がもろに脅威となる従来型業種が,CD で商売をしている音楽業界であり,それが Winny に対する「機械破壊」の行動を起こした。
    破壊の方法は,「著作権法違反を幇(ほう)助」のかどで Winny を有罪にすること。
    ネットワーク時代の「著作権」のあり方・立て方という問題に対し,音楽業界は Winny という機械の破壊を自分の答えにしたわけだ。

    もっとも,音楽業界も「Winny 破壊」一辺倒ではあり得ない。
    音楽のネット配信が趨勢になっている状況をまのあたりにして,音楽業界はネットワーク時代の「著作権」のあり方・立て方を根本的に考えないわけにはいかない。

    音楽業界がしっかり自らに戒めねばならないことは,懲らしめる対象を間違ってはならないということだ。
    彼らは,不正ユーザを懲らしめることを Winny の抹殺に換えている。
    不正ユーザを捕らえ懲らしめることが困難なので,Winny の抹殺という安直な方法を選んでいる。
    これは,モラル・ハザードをひき起こす。

    マスコミは,このモラル・ハザードに手を貸す格好になっている。
    彼らは Winny の問題に対しては「両刃の剣」の論調をつくっているが,「両刃の剣」はモラル・ハザードを温存・増長する論である。
    自分のことになると人一倍敏感なマスコミであるが,Winny 問題に対してはこれをすっかり他人事としたようだ。