Up 中央指導デモクラット 作成: 2008-02-19
更新: 2008-02-19


    一般論として,中央指導の体制においては,トリー型指令系統を逸脱・無視するコミュニケーションは敵になる。
    それは,中央指導の秩序を乱し,体制破壊につながる。
    よって,共産主義国家が好例になるように,中央指導体制は自ずと系統逸脱的なコミュニケーションの排除に進む。
    この排除は,メディア管理と個別摘発の2面で行われる。

    中央指導が嫌うのは,「直接制のネットワーク」。
    そして,中央指導が「かくあるべし」としているのは,「中央指導/執行部指導のトリー」。



    中央指導を退けようとするものが,デモクラシーである。
    しかし,中央指導体制には,「学長の強力なリーダシップ」のトップダウン体制を実現した国立大学が例になるが,自分をデモクラシーに立つ者とみなすタイプのものがある。

    このとき鍵になっているのが,「代議制」である。
    デモクラシーは,中央指導を退ける装置として,代議制を用いる。 しかし,代議制も,「中央指導」のトリーを用いる。
    代議制のトリーと中央指導のトリーの違いは,僅かに意味付けの違いだ──ボトムアップとトップダウン。 構造的に同じなので,ボトムアップは容易にトップダウンに変えられる。

    このように,代議制というのはひじょうに危ういシステムなので,代議制を中央指導からガードするには,さらに装置が必要になる。これが,「直接制のネットワーク」だ。

    件(くだん)の中央指導は,デモクラシーから「代議制」を形としてとり,デモクラシーのもう一つの要素の「直接制のネットワーク」を退ける。 しかし,「代議制」をとっていることを以て,自分のことを「デモクラシーに付いている」とする。
    「直接制のネットワーク」を重要としないのは,彼らの前衛主義・エリート主義による:

      正しく考えることのできる者が,代議員に選ばれてくる。
      正しく考えることができれば,自分たちと同じになる (自分たちと同じでないのは,正しく考えることができないからである)。」
      正しいことを知りたければ,われわれに尋ねればよい。われわれがそれを教えてやろう。

    この精神構造を,ここでは「中央指導デモクラット」と呼ぶことにする。

     註 : デモクラシーは,つぎの哲学を以て中央指導/執行部指導 (前衛主義) を退けるところのものである:
    「知は多数多様の個に存する。少数は,個の知 (それが集まって形成する複雑系の知) を拾えない。よってつねに誤る (例:共産主義国家の計画経済)。」


    中央指導デモクラットは,「組織秩序」の言い方で,「直接制のネットワーク」を排除しようとする。 (中央指導の安定は,直接制の排除にかかっている!)

    「直接制のネットワーク」排斥のメディア管理は,メディアが貧しい段階では成功する。 しかし,今日,個人がコスト・レスでグローバルなコミュニケーションを展開できるメディアが,一般のものになってしまった。インターネットである。

    「直接制のネットワーク」の立場では,インターネットが自由主義・デモクラシーを実現するためのインフラとしてことのほか重要なものになる。──実際,インターネットの登場で,反照的に,自由主義・デモクラシーがこれまで自身を実現するインフラを実は持っていなかったことがわかった。

    こういうわけで,中央指導デモクラットによる「直接制のネットワーク」排除の行動は,自ずと「中央によるネットワーク支配」に進む。


    以上の一般論は,「学長の強力なリーダシップ」のトップダウン体制を実現した国立大学にもあてはまる。 ──少なくとも,「あてはまる」を,警戒的・批判的に主題にする必要がある。