Up 「使われると損」対「使ってもらうと得」 作成: 2008-01-27
更新: 2008-01-27


    著作権は,英語で "copy right",複製に対する権利である。
    「本物」の概念が成り立つものには,著作権は発生しない。

    自分のつくったものが複製されそして使用されるとき,その「使用」に対する自分の受け取り方には,つぎの2通りがある:
      「無断使用=盗用」(使われると損)
      「活用」(使ってもらうと得)

    著作権を立てるときの著作は,使用料を得ることを目的につくる著作である。
    この場合,無断使用は「使用料不払い」の形なので,「盗用」になる。


    『「ネットワーク上の著作権に関する新聞協会見解」について』に,つぎの文言がある:

    大学などで,「研究や教育を目的としているから」という理由で,情報を無断で利用するケースも散見されますが,やはり著作権法に触れます。

    やはり著作権法に触れます」の言い方には,「これは論理的に結論される」の思わせぶりがある。 しかし,著作権を立てるかどうかは,自分の問題である。 すなわち,自分の著作に著作権を立てるかどうかは,自分の著作を自分がどう規定するかの問題である。

     重要 : 法は「形」を定めるのであって,その内容を定めない。
    内容を定める (=形の適用を行う) のは,この法を運用を考えている本人である。
    類比:「形の学」としての数学


    著作権法に触れる」とは,「盗用」ということである。
    新聞協会は,大学の「研究や教育を目的としているから」を理由にした無断使用を,なぜ「盗用」であるとして禁じないのか?
    寛容か?

    否。
    新聞業界にとって,大学の「研究や教育を目的としているから」を理由にした無断使用を「盗用」として禁じることは,不利益なのである。

    大学は,「研究や教育を目的としているから」を理由にした無断使用において,新聞記事の「活用」を「研究開発」していることになる。
    新聞業界にとっては,この「研究開発」をやらせている方が得なのだ。
    どういうことか?


    新聞記事の無断使用では,出所 (○○新聞,○年○月○日) が必ず明記される。 なぜなら,出所はこの場合の情報の不可欠の要素だからだ (これを欠けば,情報の意味が無くなる。)
    この<出所明記で無断使用される記事>に対して著作権が立てられるのは,無断使用が「使用料不払い」の形になる場合である。 そして結局それは,本・雑誌・CD等の形にして売れるという場合である。

    本・雑誌・CD等の形にして売れる記事は,シリーズものや,解説である。
    ニュースではない。

    そして,大学が「研究や教育を目的としているから」を理由にして無断使用するのは,ニュースである。
    シリーズものや解説は,無断使用しない。 なぜなら,シリーズものや解説の言説は,自分の領分であるからだ。


    このように,新聞業界と大学は,共棲関係をもてる具合になっている。
    大学の「研究や教育を目的としているから」を理由にした記事の無断使用は,新聞業界に損害をもたらさない。 同時に,それは新聞記事の「活用」の「研究開発」を,新聞業界に提供する。
    インターネット/ウェブ上の「新聞」というものが未だつかめていない時代にいて,この共棲関係は大事にすべきである。