Up 「無菌」から「健康」へのパラダイムシフト 作成: 2006-12-03
更新: 2006-12-03


    システムのセキュリティ問題は,システムの出発とともには起こらない。
    システムが汚染されたところから始まる。

    システムが成長し,犯罪の旨味が見えてきたところで,犯罪の標的になり,そしてセキュリティが問題化されるようになる。 セキュリティが問題化されたときには,システムには既に犯罪が棲んでいる。すなわち,システムは汚染されている。

    システムが単純で小さければ「システムの再構築」を汚染除去の方法とすることができるが,システムが大きくなると「システムの再構築」はあり得ないものになる。 また,システムが大きくなれば,巧妙化する犯罪からそれを守ることは,ますます至難になる。

    結局,大きなシステムは汚染を抱え,汚染との共存を考えるものになる。
    セキュリティ対策は,「システムの汚染をいま以上にひどくしない」ないし「被害を治癒する」というようになる。 また,前線を後退させて,より小さくより中心的な部分の防衛に目標を変える。

    システムの進化は汚染とのトレードオフである。
    システム一般に言えることとして,システムは無菌・無垢のままで大きくはなれない。

      例:わたしたちの棲む社会 (犯罪との共棲)


    しかし,ここが重要な点であるが,このことは汚染に対するシステムの敗北/屈服を意味しない。
    システムは,汚染を自分の要素とするようになる。「汚染を取り除くと病気になってしまう」体に変わる。そのような形に<進化>する。

      例1: わたしたちの体 (菌や寄生生物との共棲)
      ──寄生は共生へと変わる=菌や寄生生物を排除したら病気になる
        (例:アレルギー症)
      例2: わたしたちの棲む社会 (犯罪との共棲)
      ──犯罪の経済効果

    そしてこのとき,システムに関する「セキュリティ=無菌」問題は,「健康」問題に変わる。

      「無菌」のパラダイムは,「汚染・犯罪からの防衛」。
      「健康」のパラダイムは,「汚染・犯罪を自分の体内に取り込みそれと共生することで,かえって自分の生命力が改善される」というもの。