Up | ネットワークの進化とセキュリティ | 作成: 2006-11-27 更新: 2006-11-27 |
社会はネットワークの上に基幹要素をシフトし,ネットワークがトラブルを起こしたときには社会全体が麻痺してしまう構造をつくった。 これは,わずか十数年の間の出来事である。 そして,この事態の急展開に,ネットワークの精神文化が追いついていない。 インターネットは,現在のものとはまったく違うスタンス・形で始まった。 日本の国立大学がインターネットでつながった 1990年代初めの頃は,イノベーション・篤志・連帯がインターネットの文化だった。 そして,社会全体がインターネットに参入してきた。 インターネットは,社会の構造をそのまま取り込んだ社会インフラになった。 商業主義や犯罪もそっくりここに棲む。 ネットワーク管理・運用の方法論も,この事態の推移に応じて変化してきた。 大学インターネットの時代は,サービスを広く共有するという思想に立っていた。 ネットワーク管理・運用の方法論は,「門戸・サービスを外に開く」だった。 商業主義や犯罪の棲むいまのネットワークの管理・運用の方法論は,セキュリティ──すなわち,各戸がしっかり施錠するというもの。 さらに,セキュリティは,《事件 → 責任追及》のいまの社会風潮とマッチして,いまやネットワークの第一等の「精神文化」になった。 セキュリティを信用問題に位置づけるようになった組織・機関は,セキュリティ対策 (免責対策を含め) に余念がない。 ハードウェア,ソフトウェアのビジネスが一段落し新しい市場を模索していた ITビジネス界は,セキュリティに大きな市場を見て,セキュリティ・ビジネスを展開している。 しかし,システム一般に言えることとして,システムは無菌・無垢のままで大きくはなれない。システムの進化は汚染とのトレードオフである。 実際,システムの汚染に対して再構築が方法となり得るのは,システムが小さくて単純な場合だ。 大きなシステムが汚染したときには,その汚染との共存を考えるしかない。 このとき,システムに関する「セキュリティ」問題は,「健康」問題に変わる。
ネットワークは,日々急速に拡大し続け,複雑の度を増し,まさに「セキュリティ」から「健康」へのパラダイムシフトが必要になるシステムへと進化している。 |