Up 道具の理由の忘却 作成: 2007-09-26
更新: 2007-09-26


    システム/規則は,運用が次第に硬直化する。
    人はその硬直化に合わせることが強いられる。
    こうして,システム/規則は人に敵対するものになる。


    硬直化は,システム/規則を起ち上げた者 (以下,創業者) とは別の者が,システム/規則の運用担当者 (以下,運用担当者) に就くことから始まる。

    創業者は,システム/規則の what, why を持っている:

    • 起ち上げた理由
    • 抱えている問題点 (保留にしている問題点)
    • 「分限」の考え方
    • 運用の立場

    これらは,運用担当者には引き継がれない。
    たとえ引き継ぎがあっても,担当交替を重ねるごとに忘却が進む。
    システム/規則は,運用担当者にとって絶対<所与>となり,what, why を欠いた how で運用されるものになる。

    what, why を欠くので,状況に融通を利かせることができない。
    紋切り型の how で運用される。
    これが,システム/規則の硬直化である。


    システム/規則を硬直化させない方法は,担当交替による忘却の進行が問題として残るにせよ,what, why の受け伝えが唯一のものである。

    しかし,一般に,ひとは what, why の受け伝えということに,存外無関心である。 システム/規則の起ち上げでも,what, why の伝達が閑却される。

    ひどいのになると,反対を嫌がって,what, why の本当のところを隠して/ごまかしてシステム/規則の起ち上げを行う。
    国立大学における「法人化」の制度整備では,このようなことがしばしば目にされる。

    そこで,いま改めて,「what, why の明示」を課題として立てる必要がある。


    「what, why の明示」とは,どのようなものか?
    日本国憲法には「前文」がある。そこには,憲法確定の理由が簡潔に書かれている。 これは「what, why の明示」の一つであるが,ここで謂う「what, why の明示」は研究論文並みに緻密な内容のものを指す。

    「法人化」の国立大学の各種規程には,この意味での「what, why の明示」がない。 「理由など知る必要はない。ただ,これに従えばよい。」然としている。 これらの規程の運用が硬直化することは,目に見えている。

    教務システムの運用の硬直化も,ひどいものがある。 融通無碍が本位の教育を教務システムの定型に合わせることを求める本末転倒が,進行している。
    こうなってしまうのも,教務システムの what, why:

    • 起ち上げた理由
    • 抱えている問題点 (保留にしている問題点)
    • 「分限」の考え方
    • 運用の立場

    の受け伝えがないからだ。 運用担当者は,システムを絶対<所与>として,how 一本で運用することになってしまう。