Up 「通信の秘密」とは「覗ける者が覗かない」こと 作成: 2007-10-17
更新: 2007-10-17


    情報システムの管理・運用は,モラルに立脚している。
    このことを示す例として,「通信の秘密」を取り上げる。


    「通信の秘密」とは「覗ける者が覗かない」ことである。
    覗ける者が覗かないのは,「覗かない」がモラルになっているからである。

    私企業では,メールはプライベートなものではないとしている。
    すなわち,「任意にチェックします」を了解事項にしている。

    これは,一見乱暴に見えるが,「良心的」と見ることもできる。
    実際,「覗ける者が覗かない」がモラルにのみ依っていることに対し,その危うさの方を見るならば,「覗ける者は覗く」にした方が全体の安心になる。 「覗くことも管理の一環である」とした方が,紛れがなくなる。

    私企業がこれをできるのは,「雇用者=管理者 -対- 被雇用者=被管理者」の関係を立てているからである。 逆に,このような関係を立てていないところでは,「覗ける者が覗かない」にしなければならない。

    実際,わたしたちの社会は,「覗ける者が覗かない」の上に立っている。
    「覗ける者が覗かない」を生活の前提にしている。


    「覗ける者が覗かない」は,モラルにするしかない。
    システム (例えば,覗ける者同士の相互監視システム) でこれを実現することは,できない。 (「実現しない」とは,「コスト (手間) がひどく,しかも実効しない」ということ。)

    ユーザの多くは,「覗ける者が覗かない」を問題としてもっていない。 それは,単に,情報システムの知識をもっていない (情報システム管理者が何でもできるということを知らない) からである。 ──情報システム管理者の万能を知れば,「情報システム管理者こそが,自分がもっとも信頼をおいている他者である」の認識をもつことになる。