Up 「セキュリティ」バブル 作成: 2007-12-28
更新: 2007-12-28


    「バブル」という<集団心理>現象がある。
    バブルが終わってバブル期を振り返り,社会全体が舞い上がっていたことに呆れる。 しかし,バブルの最中には,それぞれが自分は合理的に思考し行動していると思っている。

    バブルと「合理的な思考・行動」は,矛盾しない。
    「合理的な思考・行動」は,時間スパン依存であるからだ。
    自分/社会の一生を今日1日のように考えるのか,それともこれから先ずっとのように考えるのかで,「合理的な思考・行動」が違ってくる。 バブルとは,自分/社会の一生を今日1日とするような思考・行動の仕方を人がとるようになる現象である。


    「IT」が,バブルになった。
    そしていまは,「セキュリティ」がバブルになっている。

    バブルは,短期利益回収型のビジネスが触媒になる。
    特に,ベンチャー型ビジネスが,バブルの雰囲気形成に一役買う。
    「セキュリティ」バブルでは,セキュリティビジネスがバブルの雰囲気形成の中心にいる。


    「セキュリティ」バブルの渦中にいる者は,「セキュリティ」に対する自分の考え方 (「合理的な思考・行動」) を疑っていない。 しかしそれは,自分/社会の一生を今日1日とするような思考・行動の仕方をとっているということである。
    よって,失敗する。
    ゆえにバブル期にこそ,「いま」を長期スパンで (すなわち,「いま」を未来像と重ねて) 思考しようとするインテリジェンスが必要になる。


    「セキュリティ」のいまのパラダイムは「虫を自分に寄せ付けない」である。 しかし,これはもう無理になってきている。
    すなわち,このパラダイムは,(1) 手間暇と経費に関してひどくハイコストになってきた。(よって,セキュリティビジネスが成り立つ。) そして,(2) 実効しているのかどうかが,現実にわからなくなりつつある。

    これは,システムが拡大し複雑系になるときの,システムの宿命である。
    大きなシステムは,「虫」を呼び込む。
    見方を変えれば,大きなシステムは,「虫 (小さき者・卑しき者)」をたくさん養う役割を担う。
    一本の大木は,無数の虫を自分に棲まわせる一つの生態系である。 ほ乳動物は,自分の腸にびっしり隙間無く寄生虫を棲まわせる。
    そして,「虫」が己の要素になっていく。


    いま,ネットワークは,犯罪や病毒を棲まわせるシステムに成長した。 すなわち,「機能的不具合・トラブルに対して強くなる」という形とともに,「犯罪や病毒に対して強くなる」という形で,進化している。
    実際,いま急に犯罪や病毒が無くなったときには無用になってしまう機能・装置を,既に数多く内装している。 つまり,ネットワークは,現実に,犯罪や病毒と共にあるべきカラダに変わってきている。

    「虫を自分に寄せ付けない」パラダイムは,もう無理になってきており,早晩破綻する。 一方,「セキュリティ」バブルは,人にこの破綻を見させないように働く。 そして,無理な方向に進ませる。

    無理は,システムをいびつにする。
    いびつなシステムとは?
    それは,内部統制,使用制限,thin client,認証,障壁,機能削除,アップデート等々を錦の御旗に掲げる「セキュリティ至上」のシステムである。
    そして「セキュリティ」バブル期には,これは「いびつ」と思われない。