「セキュリティ」の主題を自ら理論化できていない組織/機関は,セキュリティの問題に対しては最も安全な (すなわち責任問題化を最も免れ得る) スタンスを選ぼうとする。その結果,バランスを欠いたやたら高いプライオリティを,セキュリティにおく。
「thin クライアント」という概念がある。ネットワーク端末 (コンピュータおよび使用主体) の機能をできるだけ絞る/低くする,という意味だ。
これのもともと発想は:
多くのそして雑多な端末の管理の煩雑を減じるために,端末を一つの規格にし,「アプリケーションはサーバが提供する」という形で端末の機能をできるだけ減らす。
しかし今日,「thin クライアント」が「セキュリティ」の関連で言われるようになっている。すなわち:
ネットワーク端末で悪さをさせない/事件を起こさせないために,ネットワーク端末を「thin クライアント」にする。
IT産業は「thin クライアント」をビジネスにしようとして,「セキュリティ」の不安をあおる。
セキュリティに漠然とした不安を抱く組織/機関は,「thin クライアント」を趨勢と受け取って,「thin クライアント」の導入を考える。
しかしこのとき,組織/機関はつぎの意味を十分理解する必要がある:
セキュリティと人的資源/組織活力がトレードオフされている
「thin クライアント」で thin にされているのは,ネットワーク端末の機器である以上に,それを活用する組織構成員である。
「thin クライアント」は,人的資源のポテンシャルを自ら下げる行為。
よって,ネットワーク端末が
「組織構成員が,多様な個として,多様な情報力を発揮するための装置」
になっている組織/機関では,「thin クライアント」は自殺行為になる。
註 : |
管理主義が風土の組織/機関では,セキュリティが人的資源/組織活力と簡単にトレードオフされる。
なぜなら,管理主義は,責任を問われる立場に就いた者に,組織よりも自分の免責を考えよう仕向けるからだ。
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