Up コンピュータ/ネットワークを否定的に主題化する理由 作成: 2007-09-06
更新: 2007-09-06


    人がコンピュータを使えば,「コンピュータの人支配」へ自然に流れる。

    「コンピュータの人支配」を否定的に主題化しなければならないのは,組織/社会の場合これが組織/社会そのものの破壊になるからだ。 ──人の「道具の方に自分のカラダを合わせる」には,他愛のないものがある一方で深刻なものもある。 「コンピュータの人支配」は,深刻度の最も高いものの一つになる。

    それはどのような破壊か?


    組織/社会は,人のよい在り方 (well-being) を実現するものとして思念される。
    そして自由主義では,「個の多様性の解発 (release)」が「よい在り方」の根本に置かれる。

    さて,ここに業務効率の向上を課題にする組織がある。
    そしてここに,業務システムが売る者が現れる。
    業務システムは,業務主体・業務内容を簡単なものに設定する方が,簡単につくれる (=廉価につくれる)。 そして,組織にとっては,廉価な方が導入しやすい。 組織は,このシステムを導入する。

    このシステムの場合,「システムを使う」には「業務主体・業務内容を簡単なものに設定する」が含意される。 こうして,本来多様な個が,簡単型にむりやり押し込まれる。 これから<逸脱>する行為は,システムの運用を損なうので,厳しく斥けられる。
    システムを使う側は,業務効率の向上のため,この状態が固定的に継続されるよう努める。

    こうして,「個の多様性の解発」と正反対の画一主義・全体主義の組織ができあがった。 自由主義の立場では,自由主義が思念する組織の対極の組織になったわけであるから,これを「組織の破壊」と言う。

      逆に,これを「組織の進歩」と言うときには,別の哲学/イデオロギーに拠っていることになる。