Up 6.3.1.1 “一般化規則”の所在  


 一つのシェマsに対し,sが定理シェマ(§6.8)であることを示す証明は,超越論的である。実際,この証明は,《sをシェマとする全ての文は定理》という結論に現われる“全て”という語を扱わねばならない。これは超越論である。

 そこで,“全て”の語を扱うこの証明において,われわれは超越論的な規則を用いていることになる。

 例えば,sen⊃sen が定理シェマであることを示すのに,メタ記号φを導入し,つぎのような論法を用いる:
    “文φに対し,テクスト変形規則(“推論規則")から,・・・・のようにして φ⊃φ が導かれる。したがって φ⊃φ は定理。φは任意だから sen⊃sen は定理シェマ。”
そして最後を締めくくっていることば:
    “φは任意だから sen⊃sen は定理シェマ。”
は,所謂“一般化規則”:

φ
─────
(∀x)φ

のメタ的適用ということになる。

 このメタ証明は,(∀sen)(sen⊃sen) を定理シェマとして確立しようとするメタ証明とは,区別される。実際,後者の証明は,
    “文変項φに対し,テクスト変形規則(“推論規則")から,・・・・のようにして φ⊃φ が導かれる。したがって φ⊃φ は定理。よって,φ⊃φ から一般化規則によって導かれる (∀φ)(φ⊃φ) も定理。φは任意だから (∀sen)(sen⊃sen) は定理シェマ。”
そして,この証明の中の“一般化規則”は推論規則であり,先頭の全称記号がシェマ全体を束縛している形のシェマを定理シェマとして証明する場合には,必須の推論規則となる。

 しかし,先頭の全称記号がシェマ全体を束縛している形の定理シェマは,“実効性”の観点で言えば,先頭の全称記号を除いた定理シェマと変わらない。この全称記号は,過剰なのである。しかもつぎに述べるように,“一般化規則”の措定は,“演繹定理”と両立できないという難点が伴う。

 そこでわれわれは,述語論理から“一般化規則”を排除することにする。