Up 「熊と出遭ったとき」諸説について 作成: 2015-01-26
更新: 2015-01-26


    「熊と出遭ったとき」には,諸説がある。
    そして,真偽が定かでない。

    実際,それらは,たいてい又聞きである。
    体験談であっても,その「熊と出遭ったとき」は<たまたまそうだった>ということである。(しかし,ひとは,自分の一回の経験を普遍化したがるものである。)

    信頼できる説は,バラバラの説を総合する方法では得られない。
    信頼できる説は,熊と係わってきた経験値の高い者に求めるのみである。

    ヒグマであれば,これと係わってきた経験値の高い者といえば,アイヌである。
    そこで,そのようなアイヌがヒグマについて語っている文献はないかとさがしてみる。
    こうして,つぎの二つに至った:
    • 姉崎等『クマにあったらどうするか』, 木楽舎, 2002
    • 砂沢クラ『ク スクップ オルシペ 私の一代の話』, 北海道新聞社, 1983
    ともに良書である。


    なお,ケースバイケースのうちにも,「熊と出遭ったとき」の普遍命題というものはある。

    一つは:
      「逃げの姿勢を見せてはならない」

    実際,最悪は,<背中を見せて逃げる>である。
    これをやってしまうと,熊は攻撃本能から襲ってくる。
    このように襲われたら,人間はひとたまりもない (殺られてしまう)。

    もう一つは:
      「出遭いは,クマにしても,嫌な状況である──無事で終わらせたい」

    上の2つの命題から,つぎの命題が導かれる:
      「クマに正対し,目を合わせたままでいる」

    目を合わせて,からだはどうするか。
    これには,つぎの二つの説が立つ:
    1. じっとしている
    2. 後ずさりのポーズを示す
    そして,a, b いずれにしても,クマがこのポーズによってどう出てくるかは,運を天に任せる。
    クマの「無事で終わらせたい」に賭けるわけである。
    クマが去ってくれたら,「助かった!」となる。
    クマが去ってくれなかったら?
    成り行きに任せるということである。


    「b. 後ずさりのポーズを示す」について:
      「後ずさり」は,ポーズである。
      ポーズである他ない。
      後ずさりは,続けられない。
      続けられないどころか,そもそも後ずさりなんかまっとうにできるわけがない。
      クマと出遭うような道なき場所でそんなことをしたら,何かに足をとられて転倒するのが落ちである。
      転んだら,熊は攻撃本能から襲ってくる。

      「後ずさり」のポーズの意味は,何か?
      クマを安心させるである。


    他につぎのような説がある:
      「手をゆっくり振る」
      「声をかける」
      「声をかけるのはダメ」
      「こっちから威嚇する」
    これらについては,<言ってる本人が,実際に何度も実践して,本当にこれでだいじょうぶとなったもの>とは見なし難い。
    あやしいと疑ってかかるのみである。

    わたしとしては,いろいろ考える余地などないので,熊と出遭ったときの行動はつぎのただ1つに定めている:
      「クマに正対し,目を合わせたまま,じっとしている。
      (このポーズに対してクマがどう出てくるかは,運を天に任せる)」