Up 新陳代謝──動的定常 作成: 2015-01-11
更新: 2019-04-27


    生物の個体は,時空存在である。
    この存在の時間的変化は,「成長」である。

    一時点での成長の変化率 (微分) は,「新陳代謝」である。
    「新陳代謝」は,個体を構成している要素の入れ換えである。

    特に,生物の個体は,「形式」である。
    非実体である。
    生物の個体は,変化する時空形式である。


    成長は,短い時間スパンでは,「定常」である。
    「定常」の内側では,「新陳代謝」が起こっている。
    この意味で,「定常」は「動的定常 (dynamic stationary」である。

    生物の個体の存在保持は,形式の保持である。
    形式保持は,「新陳代謝」をメカニズムにする。

       福岡伸一 (2007), p.163
    肉体というものについて、私たちは自らの感覚として、外界と隔てられた個物としての実体があるように感じている。
    しかし、分子のレベルではその実感はまったく担保されていない。
    私たち生命体は、たまたまそこに密度が高まっている分子のゆるい「淀み」でしかない。
    しかも、それは高速で入れ替わっている。

    この流れ自体が「生きている」ということであり、常に分子を外部から与えないと、出ていく分子との収支が合わなくなる。


    「新陳代謝」は,「生物」の必要条件であるが,十分条件とはならない。
    即ち,非生物でも,「新陳代謝」が存在保持のメカニズムになっているものは,考え得る。 ──川,砂丘,雲など。

       同上, pp.166,167
    秩序は守られるために絶え間なく壊されなければならない
     ‥‥‥
    エントロピー増大の法則に抗う唯一の方法は、
    システムの耐久性と構造を強化することではなく、
    むしろその仕組み自体を流れの中に置くことなのである。