Up | 0.2 本論の概要 |
第2章では,この三領域についての,言わば第一次オリエンテーションを行なう。機能論については,数学教育に対する〈関数〉の解釈を示す。特に,この関数の入出力になるものとして"テクスト"の概念を導入し,さらに存在者に対する一つの記述レベル──"テクスト内存在者"──として"傾向性"の概念を導入する。価値論については,価値に対するプラグマティックな立場を,わたしの採るものとして示す。実践論については,"投機性"の概念を,実践論の中心概念になるべきものとして導入する。 第3,4,5章は,それぞれ機能論,価値論,実践論の,言わば第二次オリエンテーションである。 第3章(機能論)では,いくつか概念装置──"言語ゲーム","道具−遊具","育てる/育つ","機能欠損","低迷−覚醒"──を導入する。 第4章(価値論)では,一般陶冶論に対するわたしの見解を示す。 第5章(実践論)では,実践論の領域区分を示す。はじめに,(1) テクストへの反応理論,(2) 指導案作成の実践論(狭義実践論),の区分を立てる。(1) についてはさらに,(1-1)"テクストへの反応"の理解図式,(1-2) コミュニケーション論,(1-3)〈内〉の扱い,という三つの主題を立てる。また,(2) については,(2-1) 教育の投機性,(2-2) 教材研究,(2-3) 指導案,(2-4) 各論,の四つの主題を立てる。 (1-1) については,わたしが伝来の意味中心主義的な図式と対峙/対決していかねばならないことを示す。(1-2) については,"コミュニケーション"に対するわたしの見解を示しつつ,わたしが対峙/対決しなければならなくなる図式として表象主義的図式について言及する。(1-3) については,数学教育学を実学と見るわたしの立場から,〈内〉が閑却して構わない問題機制であることを主張する。 (2-1) については,教育の投機性の二つの理由(構造)を示す。(2-2) については,"教材研究"のつぎの領域区分を示す:(2-2-1) ゴールとなる言語ゲームの同定(主題研究);(2-2-2) 学習者をこのゴールに到達させるために"授業"として逐次展開されるところのテクストの同定(指導法の研究)。(2-3) については,"指導案"におけるコミュニケーションの機能を確認する。 この"緒言"は,わたしが数学教育学のゴールと位置付けている"各論"に全く触れていない。したがって,この"緒言"で導入する枠組みを読者が全くの"空手形"と見なすとしても,それはもっともなことである。またそれ以前に,"意味不明"という形の批判が立ち得る。わたしは,各論をこの"緒言"に直ちに後続させ読者に是非を問う責務を負っている。(併せて,わたしの大股の歩みを精緻化する責務を負っている。) |