8-2 「形」指導の不可避
「形」指導は困難だが,不可避である。すでに強調してきたように,「ウソも方便」は最後の「大円団」に収束しない。その前に学習者が倒れてしまう。
ここで読者は,「ウソって何のことだ」といぶかしく思っているかも知れない。例をあげよう。
さすがに教科書には「長さ掛け長さは面積」,「距離割る時間は速さ」とは書いていない。しかし,方便でこの言い回しを使っている教師は少なくないであろう。これは「ウソ」である。実際,「長さと長さを掛ける」,「距離を時間で割る」ってどんなことだと改めて問われたら,だれでも???である。
この言い回しは,つぎの(長くめんどうくさい)言い回しをはしょったものである:
“長さの単位Aに対し長さA四方の正方形の面積Bを面積の単位として選ぶとき,長方形に関して,(Aに対するタテの長さの測定値)掛け(Aに対するヨコの長さの測定値)は(Bに対する面積の測定値)”
“時間の単位Aと距離の単位Bに対し,速さ(すなわち,時間と距離の比例関係)の単位としてAあたりBの速さ(すなわち,時間と距離の間の比例関係でAにBが対応するところのもの)Cを選ぶとき,運動体に関して,(Bに対する移動距離の測定値)割る(Aに対する経過時間の測定値)は(Cに対する速さの測定値)”
「掛け」と「割る」はここでは測定値としての数に対するものであるから,???はない。