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English
「相似」の定義
「相似」の意味を,つぎのように述べました:
「物は遠近によって視覚的な大きさを変えます。しかしわたしたちはそれを同じ物と認識できます。なぜ? いろいろな答え方があり得ますが,その一つのタイプが「形が同じ」です。 数学は,この「形が同じ」を「相似」ということばで主題化します。そしてそれの定式化を行います。」
この意味を汲むとき,「相似」の定義はつぎのようになります:
「
2つの形が相似であるとは,一方の拡大・縮小によって2つが合同になること
」
そして,「合同」と「拡大・縮小」の定義をその前に済ませておくことになります。
「相似」をつぎのように定義することもできます──これは「合同」と「拡大・縮小」の定義を借りないやり方です:
定義その1(「合同」の定義の一般形)
ユークリッド空間の二つの部分 A,B に対しつぎの条件を満たす写像 f と正数 r が存在するとき,AとBは相似であるという:
f は A から B の上の写像。
A の任意の2点 X, Y に対し,f(X) と f(Y) の間の距離は X と Y の間の距離の r 倍。
定義その2
ユークリッド空間の二つの部分 A,B に対しつぎの条件を満たす写像 f が存在するとき,AとBは相似であるという:
f は A から B の上の写像。
A の任意の4 点 X
1
, Y
1
, X
2
, Y
2
に対し,f(X
1
), f(Y
1
) 間の距離と f(X
2
), f(Y
2
) 間の距離の比は,X
1
, Y
1
間の距離と X
2
, Y
2
間の距離の比に等しい。
「定義その1」の f は「拡大・縮小」です。
「定義その2」の f は「形を保存する写像」です。
操作性ということでは「定義その1」がまさります。一方,「定義その2」は「相似=同じ形」の意味を大事にしています。
学校数学では写像 f に特に名前を与えていません。しかしそれでは不便ですので,ここでは「相似写像」と呼んでおくことにします。
注意 :
「相似」は,ユークリッド空間の二つの部分の間の関係として定義(定式化)されます。「合同」や「拡大・縮小」も同様です。