Up 「10」は数学の主題ではない 作成: 2011-09-15
更新: 2011-09-15


    「10」の出自は,
      《人は,10本ある自分の指を使って,物を数えた》
    である。 これを意義とする「10」は,数学ではなくて,文化人類学や生活科の主題になる。 (『数概念の人類史的変遷に関する一考察』)

    もちろん,<形式言語の上の理論>として自然数論を 0.1.2.3.4.5.6.7.8.9 の記号を使ってつくることは,可能である。 そして《矛盾を含まない》という意味では「数学」になる。 しかし,数学の立場からいうと,数学ではない。 ──応用数学の内容にはなるが。

      <形式言語の上の理論>として自然数論をペアノの公理にならって (即ち,「1」と,「後者」の記号「’」を用いて) つくるやり方については,つぎを参照:「自然数論」

    数学がどうして生活的なものを退ける格好になるかというと,「生活」に縛られないことを方法にしているためである。
    数学は,結果として,「自由な目を獲得する」を理念にするものになっている。 「自由な目を獲得する」にとっては,「生活」も退けるものに入る。 というより,「生活」こそ真っ先に退けるべきものになる。

    「10」を数学の対象にしないのは,このことを以て,つぎを言外に言っているわけである:
      10には特別扱いされるような本質は何もないぞ。
    2でも5でも何だっていいんだぞ。
    10に数学的な意味があるみたいに誤解させないよう,10を扱っていないんだぞ。


    そこで特に,小学校の「自然数のかけ算」であるところの
      「自然数を十進表記したときに導かれる<和の計算アルゴリズム>」
       (「十進数の和の計算アルゴリズム」)
    みたいのは,逆に数学の主題にならない。 これは,数学の応用 (「生活科」) の主題になる。
    算数科は数学科と生活科の二面があるが,「十進数」をやっているときの算数科は,生活科ということになる。