11.2 測定対象



 測定──量を《単位×数》の形に表現する実践──について,“量を単位で測る”という言い方を普通に用いている。しかし,測ろうとする量も,単位も,あくまでも読み(ことば)であり,実在しているのは,
  1. 〈測ろうとする量〉が読まれているところのモノ(事態)と,
  2. 〈単位〉がそこに読まれるところのモノ(事態)
である。──例えば,
  1. 測ろうとする量が読まれているモノ=液体
  2. 単位 dl がそこに読まれるモノ= dl計量カップ
という具合に。

 さらに,測定は量の操作ではなく,あくまでもモノに対する操作である。そして,モノに対する或る一連の操作が“単位いくつ/単位の何倍”と読まれる,ということである。

 即ち,単位の現象である〈個〉と,〈個〉の集合と読まれる測定対象Xがあり,Xにおいて〈個〉が数えられる。“測る”──Xに読まれた量xを,〈個〉に読まれた量uを単位として測る──とは,このようなことである。全てが読みであり,量といったものはどこにもない。

 操作に対するこの読み(解釈)は,実践であり,量の論理の外にある。“論理”ということばを強いて使うならば,それは経験の論理である。しかし,あくまでもそれは擬似論理である。読み(解釈)は実践であり,保証をもたない〈賭け〉である。