2.3.2 量の契機──素材と数



 量形式が対象化されるとき,結果論として,対象に対する“量”の読みは量形式の投企であることになる。

 さらに,量形式が数を部品としていることを考えるとき,《量とは,数という形式を通してある素材を見たときにその素材の上に一つの対象性として浮かんでくるところのもの》,と言うことができる。そしてこの意味で,量の契機は,素材と数である。

 ひとは,“量”を一つの実在のようにイメージしやすい。われわれ──特に,数を形式として使用するわれわれ──に先行して存在するもののように考えやすい。しかし,量はそのようなものとしては存在していない。

 “量”は形式である。しかしそれは,《一方に数形式,他方に量形式》というようにあるのではない。量形式は,数形式の複合である。

 特に,数を導くものとして量を考えるのは,誤りである。“量の係数”は“数”の意味ではなく,“数”の一つの使用形態である。