5.5.1 実数の系の導入



 分数の連続化として正の実数+が導入される。また,+の差の系として,あるいは有理数の連続化として,実数が導入される。

 実数の系の導入は,有理数までの数の系の実現とは様相を異にしている。即ち,有理数の系から実数の系を導入する方法には,“切断”をアイデアとするデデキント流と“コーシー列”をアイデアとするカントール流の二つがあるが,いずれもアルゴリズムではない。この意味で,実数の系は実現されるわけではない。無理数をひとつひとつ同定していくことが実数の系を明示的なものにする唯一の方法であり,かつこの作業に見通しは立たない。