8.1.1 比例関数



 数の系(N,+,×)を作用域としてもつ二つの量の系((Q1,+),(N,+,×),×),((Q2,+),(N,+,×),×)に対し,つぎの条件を満たす関数f:Q1 ─→Q2 を,比例関数と呼ぶことにする:

f(x×ξ)=f(x)×ξ

この条件は,
《xとyの比がξ:ηのとき,f(x)とf(y) の比もξ:η》

と言い換えても同じ(註1)

 fに対し,
f(x+y)=f(x)+f(y)

が成り立つ(註2)。特に,比例関数は量の系の準同型(註3)。また,線型空間の構造をもつ量の系の間の準同型は,線型写像のことになる。





(註1) (1) f(x×ξ)=f(x)×ξが成り立つとする。xとyの比がξ:ηのとき,x×η=y×ξ。そしてこれより,f(x)×η=f(x×η)=f(y×ξ)=f(y)×ξ。よって,f(x)とf(y) の比はξ:η。
 (2) 逆に,《xとyの比がξ:ηのときf(x)とf(y) の比もξ:η》が成り立つとする。このとき,xとx×ξの比は1:ξであるから,f(x) とf(x×ξ) の比は1:ξ。即ち,f(x)×ξ=f(x×ξ)。

(註2) Q1の単位uに対し,f(u×ξ+u×η)=f(u×(ξ+η))=f(u)×(ξ+η)=f(u)×ξ+f(u)×η=f(u×ξ)+f(u×η)。

(註3) “準同型:X─→Y”は,“XをYに表現する”のような読みで理解しておけばよい。このとき,遡行可能な表現(即ち,YからXが遡行できるような表現:X─→Y)が“同型”である。